予想を上回る景気回復は
これからも続くのか
景気回復の次の段階がどうなるかを予測するには、以上の3要素を考えるだけでは十分でない。これらの要素は、力強い景気回復を持続するための前提条件と考えるべきだ。それに加えて、コロナ不況に特有の事情にも目を向ける必要がある。成長がどのように実現するかは、それらの要素によって決まるからだ。
米国経済を構成するさまざまな業種について、詳しく見てみよう。すると、すでに被った打撃の違いにより、業種を3つに分類できる。3類型の違いは、感染症の大流行による景気後退という性格から生まれるものだ。この分析によれば、景気回復が容易に進む段階は、もう終わってしまったように見える。
コロナ禍の影響を受けなかった業種:住宅、電気・ガス・水道、金融サービス、料理のデリバリー・テイクアウトなど。家計にたとえれば、これらの業種の企業への支払いは「固定費」のようなものだ。簡単には減らせない。このカテゴリーは米国の消費の約46%を占めていて、支出額が落ち込むことはなかった。
ロックダウンの影響は受けたが、ソーシャル・ディスタンシングの影響は受けなかった業種:自動車などの耐久財がこれに該当する。これらの業種は、ロックダウン(都市封鎖)により大打撃を被ったが、ロックダウンが解除されると、力強い回復を遂げた。しかも、多くの場合はコロナ危機前の水準を完全に回復し、場合によっては危機前の水準を上回るまで成長した。これらの業種が米国の消費に占める割合は約16%だ。
ワクチン頼みの業種:運輸、レクリエーション、フードサービスなど。これらの業種の一部は、ロックダウン解除後に大幅な回復を見せたが、ほとんど回復をしていない業種もある。コロナ危機前の活動レベルを取り戻せていなケースもある。これは、感染リスクが原因だ。これらの業種は、米国の消費の約38%を占めている。
したがって、力強い景気回復がさらに続くかどうかは、第3のグループの動向に左右される。第2のグループはすでにほぼ回復しており、第1のグループはそもそも業績が落ち込んでいないからだ。
そこで、ワクチンをめぐる状況が大きな意味を持ってくる。いつになれば安全で有効なワクチン(接種した人に相当期間にわたり免疫を与えることができ、しかも迅速に多くの人に接種できるもの)が登場するかは、かなり不透明だ。
本稿執筆時点では、あるクラウドソーシング型の予測によると、2021年第2四半期頃にワクチンの実質的な流通が始まる(つまり、最も弱く、最も感染リスクの高い人たちにワクチンが届くようになる)と考えるのが合理的だとのことだ。