(5)働く親にいま最も必要なのは何か

 何よりも必要とされているのは、子どものオンライン学習のやりくり、スケジュール調整、仕事と家庭の線引き、セルフケアといったところだろうか。

 だが、あまり話し合われてこなかったかもしれないが、働く親が同じくらい悩んでいることは他にもあるはずだ。たとえば、上司や同僚に子育ての大変さをどう伝えるべきか、今後も仕事に対する責任感を持ち続けるためにどうすればよいか、といったことだ。

 大事なのは、グループの実情を正確に把握することである。そうするための方法は、無記名のアンケート調査や、第一線で働くマネジャーからの意見聴取、フォーカスグループ調査を実施するだけに留まらない。

 何より、子育てや介護まっただ中の同僚数人に、何が必要かをとにかく聞いてみることだ。どんな問題が挙げられたとしても、それを軸にしてERGの取り組みや活動内容を計画するとよい。

(6)利用・借用できるリソースにはどんなものがあるか

 ということは、社外から講演者を招く予算や、社内のイントラネットにページを開設する時間がないということだろう。

 では、パンデミック中に育児や介護の体制を見直した従業員を探して、その体験談を話してくれる人を数人集めるのはどうだろうか。あるいはIT部門の誰かに、子育て中や介護中の人に役立ちそうなアプリや、テクノロジーの裏技について紹介してもらうのはどうだろう。もしくは、子どものオンライン学習を乗り切るサバイバルガイドを提供しているサイトをメンバーに紹介するのもいい。

 予算とスタッフは現状のままでも、できることはたくさんある。

(7)強化・拡充できることは何か

 あなたの所属する組織で子育て・介護支援制度が十分に整備されている場合、働く親のERGはそれらの制度を積極的にアピールすべきだ。たとえば、「従業員支援制度を利用したら、実際に何ができるか」といったパンフレットをメンバーに配布することなどが考えられる。

 また、上級幹部が働く親の支援に積極的な場合には、次のオンラインミーティングでCクラスの幹部に挨拶をしてもらうのもいいだろう。要するに、建設的なメッセージをもっと精力的に発信する場としてERGを活用するのだ。

(8)これから2週間で何ができるか

 ERGを発展させるためにすぐに実行可能で、最も強力なアクションを具体的に割り出そう。そして、すぐさま全力で取りかかろう。

 まだ腰が引けたままだろうか。忘れてほしくないのは、これらの質問に対して完璧で最終的な答えを見出せていなくても構わないということだ。

 それどころか、しばらくしたら再考しなければ、グループの士気と適切なメンバーを維持して、有意義な活動を続けられない。たとえば、「適切なメンバー募集方法にはどんなものがあるか」に対する答えは、新型コロナの感染状況が変わればおのずと変わるはずだ。

 そして最後の質問についてもう一度検討してみれば、上級幹部を招いて華々しくERGをスタートさせたはいいが、しばらくすると勢いが尻つぼみとなり、信頼度も低下するというありがちな結果も避けられる。

 重視すべきポイントを外さなければ、働く親のERGは長きにわたって成果を上げられるだろう。


HBR.org原文:8 Ways to Build an Employee Resource Group for Parents, November 11, 2020.