組織は女性を重用する方法を
どのように学んできたか
ジェンダー平等がもたらす恩恵は明白だ。だが、どうすれば組織はそれを実現できるのか。方法はいくつもあるが、まずは採用活動と能力開発に力を注ぐのがよい。これまでに効果的なアプローチが取られた事例を紹介しよう。
1980年代末、大手投資銀行シアーソン・リーマン・ハットン(SLH)のエクイティリサーチ部門を率いていたジャック・リブキンは、自部門で女性アナリストの採用、育成、昇進を拡大するために、人事プラクティスの大改革を実行した。
まず、当時はまだ珍しかった人材開発プログラムを制度化し、女性も男性と同じように、具体的な行動に移しやすいフィードバックを得られるようにした。また、ジェンダー多様性のある面接委員会を設置するとともに、柔軟性の高い勤務制度を構築するよう支援した。
こうした改革により、同社には業界でトップクラスの能力を持つ女性が集まった。4年以内に、ランキングされたアナリストの約40%を女性が占めるようになった。リブキンが同部門をリードする前の10%から大幅な上昇だ。また、同社の女性アナリストの60%以上がトップクラスにランキングされた。競合他社の平均は30%以下で、業界全体ではわずか2%にすぎなかった。見違えるように変わったエクイティリサーチ部門は、権威あるリサーチ部門ランキングで第1位を獲得した。
2005年、バイオ医薬・医療用品大手のバクスターインターナショナルは、アジア太平洋地域のマネジメント職におけるジェンダー平等を実現するイニシアティブに乗り出した。
同地域のシニアバイスプレジデントだったジェラルド・レマは、女性の採用・育成を拡大する取り組みをスタートさせた。具体的には、リーダーシップ職に空きが出た時には男女同数の候補者を検討することを義務づけ、社内のキャリアアップをサポートする研修プログラムを制度化した。さらにジョブローテーション制度を構築し、マネジャーに対してはジェンダー平等目標の達成を奨励する指標を設定した。
わずか3年で、同社のアジア太平洋地域で女性がマネジャー職に占める割合は33%程度から50%まで上昇し、同地域の売上高は11%成長を遂げた。その直近の4年間の成長率と比べて、ほぼ4倍に相当する。
2008年、JPモルガン・チェースは、多くは子育てのために2年以上のブランクを経て職場復帰する女性の採用と育成を強化するパイロットプログラムを開始した。子育てのために仕事を離れた女性は仕事へのコミットが低いという、広く受け入れられている思い込みに対して、明確に拒絶する試みだ。
パイロットプログラムの終了時、参加者の90%がフルタイム採用のオファーを受け、シニアレベルの女性が増えた。このプログラムは現在も続き、同社は能力の高い女性をさらに引き寄せ、社内の幹部候補を増やし、金融業界の女性にとって一段と魅力的な勤務先になっている。
ここで紹介した企業は、ジェンダーギャップの原因に直接切り込んだ。女性が能力を伸ばし、成長するために平等の機会を確保するように取り組んだ。また、女性のスキルとリーダーシップは重要だという明示的なメッセージを発信することで、現実的な改善策を強化し、ジェンダー包摂の文化を醸成してきた。
コロナ禍を乗り越えた時、現在よりも強い立場にありたい企業は、いまこそ行動を起こすべきだ。
HBR.org原文:How to Be a "Glass-Shattering" Organization, January 19, 2021.