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ワークライフバランスを実現しようと思いつつも、長時間労働から抜け出せずに悪戦苦闘してはいないだろうか。忙しくてじっくり考える時間もエネルギーもないと言うかもしれないが、必要なのは、まず立ち止まって「この状況は普通ではない」と認識することだ。さらに、優先順位の見直しや役割の再定義を通じて最適なバランスを実現することができても、そこで終えてはならないと筆者らは指摘する。ワークライフバランスとは、自分の状況や優先順位の変化に合わせて継続的に取り組むべき「サイクル」なのだ。


 長時間労働は、従業員にも雇用主にも有害になりうるという確かな証拠があるにもかかわらず、多くの専門職の人々はいまだに、労働時間に関する思い込みや深く染みついた習慣を克服しようと悪戦苦闘している。

 こうした不健全なパターンから解放されて、より持続可能でやりがいのあるワークライフバランスを実現するには、何が必要なのだろうか。

 筆者らはこの問いに対する答えを探るために、グローバルな法律事務所と会計事務所のロンドンオフィスに勤務する専門職78人を対象に、約200回の詳細なインタビュー調査を行った。回答者は男女同数で、ほとんどが30~50歳、少なくとも1人の子どもを扶養し、ミドルマネジメントまたはシニアマネジメントだった。

 彼らの大多数は、自分の仕事は非常に要求が厳しく、疲労困憊して、混沌としていると説明した。また、自分の仕事で成功するために長時間労働が必要なのは、当然のことだと考えていた。

 一方で、男性回答者の約30%、女性回答者の約50%が意識的に長時間労働に抵抗していると見られ、健全なワークライフバランスを維持するためのさまざまな戦略について語った。

 個々のケースの詳細は異なるが、筆者らの分析から、彼らのような専門職の人々が働き方を、さらには生き方をよりよく変える手助けとなる共通のメンタルプロセスが浮き彫りになった。

 高次のレベルでは、仕事上の優先順位と個人的な優先順位のバランスをよりよくするに、再帰性(reflexivity)(ここでは、前提に疑問を抱いて自己認識を高めること)と役割の意図的な再定義を組み合わせることになる。

 重要なのは、これが1回限りの修正ではなく、自分の状況や優先順位の変化に合わせて継続的に取り組まなければならないサイクルであることが、筆者ら研究によって示唆されている。このサイクルは、5つの明確なステップから成る。