(2)自分の感情に注意を向ける

 自分の現在の状況に対する認識を高めたら、その状況がもたらす感情について検証する。あなたは活力を感じ、充実していて、満足しているだろうか。あるいは、怒りや恨み、悲しみを感じているだろうか。

 ある回答者は、現在のワークライフバランス、あるいはその欠如が、かなりのネガティブ感情をいくつか生じさせていることに気がついた。

「人生の本質にとってまったく重要ではないものが、自分の貴重な時間を奪っていることに、憤りと苦々しさを感じます(中略)命を落とした人や人生の残された時間を宣告された人を見ると、その思いはさらに強くなります」(トビアス、監査ディレクター)

 人生を突き動かすような決断や優先順位を、理性で理解することは重要である。しかし、同じくらい重要なのは、感情の再帰性、すなわちある状況を自分がどのように感じているかを認識する能力だ。自分の感情の状態を認識することは、仕事や人生においてどのような変化を起こしたいかを決める際にカギとなる。

(3)優先順位を見直す

 認知と感情の認識を高めることは、物事を把握して、自分の優先順位をどのように調整しなければならないかを判断するために必要なツールを与えてくれる。

 自分は何を、どの程度まで犠牲にしても構わないと思っているだろうか。たとえば、これまで家族より仕事を優先してきたならば、今度は自分の人生を優先させることが大切だと思う理由は何か。そうすることは、本当に必要なのか。そうせざるを得ないのか。これまでどのようなことを後悔してきたか。そして、現在の道を進み続けたら、何を後悔することになるだろうか。 

 優先順位の変化に、日々の時間配分の習慣を変えることが追いつかない場合も少なくない。筆者らのインタビューで、よりポジティブなワークライフバランスについて語った人々は、自分の本当の優先順位と一致するように、時間の過ごし方の優先順位を意識的に変えていた。

 ある回答者は、自分が専門職であることに変わりはないが、専門職としての役割を、親としての役割や他の重要な役割をすべて含めて再定義していると語った。

「人生で何が重要なのかを本当に理解すればするほど、それは仕事そのものではなく、仕事の相対的な重要性を理解することだとわかってきます。私はいまも、仕事から多くの満足感を得ています。でも、以前は私にとって仕事がすべてでしたが、最近では仕事の重要性が半分以下になりました」(ダン、監査ディレクター)