(4)別の選択肢を検討する

 解決策に飛びつく前に、自分の優先順位と仕事や生活をさらに一致させていくうえで、変わりうる側面について熟考する。仕事について変わってほしいと思う部分はあるだろか。家族や趣味に、どのくらいの時間を費やしたいだろうか。ある回答者が語っているように、状況を改善するには時間と試行が必要だ。

「これまでいろいろやってきましたが、息子も2歳になり、よりバランスの取れた時間の使い方について『これならうまくいく』というところに、たどり着きました。おそらく自分が望んでいたより時間はかかりましたが、ようやく見えてきたのです」(マイケル、監査ディレクター)

(5)変化を実践する

 自分の優先順位を認識して、改善につながりそうな選択肢を慎重に検討したら、いよいよ行動を起こす時だ。これには「パブリック(公)」の変化と「プライベート(私)」の変化がある。

 公的な変化とは、時間の負担が減るように設計された新しい役割を引き受けたり、1週間分に圧縮された新しいモデルを導入したりするなど、同僚があなたに求めることが明確に変わるような変化だ。これに対して、私的な変化は、必ずしも同僚の期待を変えるわけではなく、自分の働き方を非公式に変える。

 いずれの変化も、持続可能な方法で行われる限り、効果的な戦略になりうることが、筆者らの研究から明らかになっている。

 私的な変化に関しては、境界線を自分で設定する(たとえば、夜や週末、休暇中は働かないと決めて、確実に守る)ことや、自分の役割に伴う典型的な要求を断る(たとえば、新しいプロジェクトや出張の依頼など、やらなければならないプレッシャーを感じても断る)ことなどがある。

 公的な変化に関しては、上司に「休暇を増やしてほしい」「勤務時間を柔軟にしたい」と伝えるだけでなく、より望ましい方法としては、影響力のあるメンターやパートナー、同僚のサポートを確保して、社内の新しいポジションや柔軟な勤務制度を正式に提案することによって、より永続的な変化がもたらされるだろう。

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 重要なのは、これら5つのステップが1回限りの行動ではなく、継続的な再評価と改善のサイクルであることだ。長時間労働の文化の影響を強く受けている場合は特に、それが意識的な判断であれ無意識的な判断であれ、「いつも通りのやり方」に戻りやすい。

 筆者らのインタビュー調査で明らかになったように、自分の人生に真の変化をもたらすには、個人の生活においてもキャリアにおいても、立ち止まって、自分の感情とつながり、みずからの優先順位を再考して、他の選択肢を評価し、変化を実践することを忘れてはならない。

編注:本稿に登場する人名は、プライバシー保護のため仮名とする。


HBR.org原文:Work-Life Balance Is a Cycle, Not an Achievement, January 29, 2021.