今回、レディットで起きた出来事、つまりオンライン・コミュニティを利用して大勢の人が足並みを揃えて行動し、特定の企業の株価をつり上げた事件をきっかけに持ち上がったのは、プラットフォーム上でどのようなコミュニケーションが許されるべきかという議論だけではありません。金融のルールと規制をどのように変えていくべきかという重要な議論も始まっています。今回の一件を受けて、どのような対応が行われると思いますか。

 SECが一連のマーケットの動きについて調査を行うでしょう。2014年にも、相場操縦を目的とする投稿をソーシャルメディアで行った疑いで、リディンゴ・ホールディングスとドリームチームがSECの調査を受けています。同様の調査が今回も行われると思います。

 今回のゲームストップ株をめぐる状況については、まだ詳しいことがわかっていません。たとえば、「ダビデとゴリアテ」のような構図でこの出来事を描くストーリーが本当に正しいのかもわかりません。

 誰が今回の動きに加わっていたのか。利害関係を持っている金融機関と結びついた人物は関わっていなかったのでしょうか。有力ヘッジファンドのブラックロックや、ペット用品のオンライン通販会社チューイー・ドットコムのCEOだったライアン・コーエンなどの個人が、この一件で莫大な利益を得ています。

 このような行為は違法ではありませんが、経済の安定を揺るがす新たな方法が明らかになったのです。たとえば、もしロシアがソーシャルメディアの操作を通じて米国の民主主義を混乱させることが有益だと考えたのなら、ゲームストップ株騒動をきっかけに、ロシアが同様の戦略により米国の経済を混乱させようとする可能性はないのでしょうか。この事件については、もっと情報が必要です。

 この出来事がもたらす結果の中で、最も重要なものは何だと思いますか。

 すでにゲームストック株問題は、この一つの銘柄だけでなく、AMC株、さらにはブラックベリー株にも急速に飛び火しています。それはもはや、ある種の社会問題と言ってもよいでしょう。

 同様のことが今後も続くかどうかは、2つのことにかかっています。1つは、誰がこの件で経済的ダメージを被るのか。そしてもう1つは、SECがどのような規制を打ち出すのか。それによって、今後に起きることが決まります。

 ゲームストップ株騒動から引き出せる教訓の中で、もっと注目されるべきものはありますか。

 よく理解しておくべきなのは、金融マーケットへの影響について言えば、ソーシャルメディアが単独で動いているわけではないということです。言うまでもなく、ソーシャルメディアは分散型のメカニズムで動く仕組みで、それを通じて、大勢の人が同調して行動したり、偽情報を拡散させたり、株式の売り買いを決めたりしています。

 でも、それだけではありません。ソーシャルメディアに表れる人々の感情を分析し、それに基づいて自動的にトレーディングを行ったり、機関投資家に株式の売り買いを推奨したりする高度なシステムが存在しています。つまり、ここにはフィードバックループが存在します。機関投資家は、大衆の心理を把握するための仕組みを持っているのです。

 そのせいで、話が複雑になっています。2つのシステムが対立しているわけではなく、複雑に入り組んだ巨大なシステムが1つ存在すると考えるべきなのです。


HBR.org原文:Online Platforms Have Become Chaos Machines. Can We Rein Them In? February 03, 2021.