筆者らは仕事を通じて(3人は経営コンサルティング会社イノサイトで、1人はDBS銀行で働いている)、バーチャルワークに伴う問題の革新的な解決策を考えてきた。新鮮なアイデアを広く募るために、リンクトインのディスカッション機能も利用した(グループ名はHarvard Business Review Discussion)。

 筆者らが世界中の企業でイノベーションの能力を高めるために使ってきた手法を用いて、ズーム会議を改善する方法を見つけるヒントを提言したい。このアプローチについては以前の寄稿で論じ、共著Eat, Sleep, Innovateでも詳しく説明している。

 基本的な考え方は、行動変容に関する研究を参考にして、筆者らがビーンズ(BEANs)と呼ぶ、「行動イネーブラー」(behavior enablers)、「アーチファクト」(artifacts)、「ナッジ」(nudge)を活用しながら、望ましい行動を習慣化することだ。

 行動イネーブラーは、人々が望ましい行動を取りやすくするように直接、促すツールなどのことだ(例:チェックリスト)。アーチファクト(自分で見たり触ったりできるもの)とナッジ(間接的な示唆や強調を通じて行動を促すこと)は、強力な間接強化として機能する(例:視覚的なリマインダーやゲーミフィケーション)。

 バーチャル会議を改善するためのビーンズを構築するプロセスは簡潔で、以下の3つのステップから成る。

 ●ステップ1

「私たちが◯◯したら素晴らしいではないか」という文章を完成させて、奨励しようとしている具体的な行動を明確にする。たとえば、筆者らが助言したある企業のチームは、バーチャル会議中はメンバー全員が常に参加している意識を持ち、活発な議論と創造的な問題解決を可能にしたいと考えていた。

 ●ステップ2

 望ましい行動を取る代わりにしていること、つまり「行動の阻害要因」を特定する。ここでは「しかし、実際には◯◯している」という文章を完成させる。例に挙げたチームは、会議が長引くとメールに気を取られたり、他のことを始めたり、単にスイッチを切ったりするなど、集団的な思考プロセスが迷走しているようだと話し合った。

 簡単に実行できる阻害要因は、特定するだけでは足りない。自分や他の人が望ましい行動を取らないのは、難しいから、適切なインセンティブがないから、不安だから、などと指摘するのは簡単だが、もっと深く掘り下げる必要がある。

1. できるだけ具体的に。「私たちは退屈している」ではなく「集団的な思考プロセスが迷走して、会議の最中に内職を始める」。

2. 感情ではなく行動を説明する。「私たちは決断することをおそれている」ではなく「決断を次の会議に先送りしている」。

3. 自明のことの先を考える。「深い議論をする時間がない」ではなく「会議のスケジュールが、誰かに委任できるような重要度の低いタスクで埋まっている」。

4.「こうした感情はどのような行動に表れているか」「私たちはなぜそうするのか」といったことを考える。

 ●ステップ3

 望ましい行動を促し、特定した阻害要因を克服することを手助けするようなビーンズを構築する。例に挙げたチームは、「ズームの道化師」役を決めようと考えた。道化師の仕事は、言うまでもなく君主の客を楽しませることだが、他にも重要な役割があった。場違いな「愚か者」として、権力者に真実を語り、他の人が報復を怖れて言いにくいような厳しいことを言っても許されるのだ。

「ズームの道化師」にも、会話を独占する人や、だらだらと話す人に警告する権限を与えることができる。道化師を正式に任命し、その役割を詳細に記したチェックリストを用意することによって、行動イネーブラーを担うことができる。ズーム画面の楽しい背景や、会議にちょっとした刺激を与える「トリック」は、アーチファクトやナッジとして機能する。

 バーチャル会議は、協力的で、魅力的で、信じられないかもしれないが、楽しいものにすることができる。チームで「ビーンズ・ストーミング」(ビーンズに関するブレインストーミング)を行い、例に挙げたビーンズからヒントを得て、あなたのチームにとって望ましい行動と阻害要因に適したものを考えよう。

 新しいことは何でもそうだが、うまくいくまでに多少の試行錯誤が必要だ。しかし、それをやるだけの価値がある。


HBR.org原文:3 Steps to Better Virtual Meetings, February 19, 2021.