●一般的な選択肢はプッシュバックする
夢を追い続けるか、必要に屈するか。これは過酷な選択だと感じるかもしれない。だが、創造的に考えれば、自分が想像している以上にたくさんの、そして当初提示されたよりも数多い可能性があるものだ。
たとえば、筆者のあるクライアントは、新しいビジネスを立ち上げたばかりのタイミングで、コロナ禍の打撃を受けた。資金難に陥る一方で、自分を雇用したいと声をかけてくれた友人がいて、彼はどうすべきか悩んでいた。自分のビジネスを諦めて、1年前に辞めたような会社勤めに戻るべきなのか。
しかし、筆者と議論しているうちに、ほかにも選択肢があることに気づいた。彼は現在、友人からのオファーをコンサルティング契約に変更できないか交渉している。コンサルティング契約であれば、自分のビジネスを続けることが可能だ。経済的な安定を確保しつつ、起業という夢を追い続けることができる。
たいていの場合、選択肢は2つだけではないこと、そして仕事のオファーのほとんどは交渉可能であることを覚えておこう。
●隙間時間を自分の目標のために使う
コロナ禍によるプレッシャーで、多くの人が燃え尽きを経験し、限界を超えていると感じてきた。そうした状況で、長期的なキャリア開発のための時間を捻出するのは、とうてい無理な話だと思うかもしれない。だが、ほんのわずかの時間でも、上手に使えば貴重な時間になる。
たとえば、運動や雑用をしている時、音楽の代わりに専門能力開発のポッドキャストやオーディオブックを聞けば、1年で数十冊の本を「読む」ことができる。
生産性の高さで知られるペンシルバニア大学ウォートンスクール教授のアダム・グラントは、ミーティングの合間の数分(往々にして雑談やSNSで終わってしまいがちだ)を利用して、自分が取り組んでいるマイクロゴールを進捗させる。
時間が空いた3分間を使って、ネットワーク構築のメールを送ったり、リサーチ中のトピックに関連する記事を2つか3つダウンロードしたりすることは、たいしたことではないように見えるかもしれない。
だが、前述したアマビールの「進捗の法則」研究が示すように、ほんのわずかな進捗であっても、自分が動いているという感覚を与えてくれる。この感覚は、自分が愛していない仕事に従事している間も、ポジティブでいるために欠かせない。
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この1年間は、誰にとっても難しいものだった。物事が計画通りに進まない時、自分を責めるのは簡単だ。だが、本稿で紹介した4つの戦略を駆使し、さらに品格と自分に対する思いやりを組み合わせれば、いま必要なことを実現すると同時に、自分が描く将来の目標に向けて準備をすることができる。
HBR.org原文:A Career Detour Doesn't Have to Compromise Your Long-Term Goals, March 29, 2021.