Yaroslav Danylchenko/Stocksy

新型コロナウイルス感染症の拡大により、私たちのワーク・ライフ・バランスは崩壊しつつある。仕事と私生活をほとんど切り離せなくなり、自宅で介護と育児に追われながら働く社員も多いだろう。そうした難題は女性が押しつけられがちで、ワーキングマザーの負担は計り知れない。企業はコロナ禍で生じたさまざまな問題を解決するために、福利厚生制度を見直すべきあり、先進的な企業はすでに実行している。


 私は2020年2月半ば、保育や介護などのヘルパーのマッチングサービスを展開するケア・ドットコムのCEOに就任した。その時、新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、多くのことが変わるだろうとは思っていた。しかし、すべが変わるとは予想できていなかった。

 そこまでの影響を予想することなど、不可能だった。現実には、コロナ禍の影響で、それまでの働き方が根底からひっくり返り、どんなにじっくり考え抜かれた戦略にも暗い影が差した。

 すぐに、はっきりと見えてきたことがあった。それは、私たちの仕事(ワーク)と私生活(ライフ)が切っても切れない関係にあるという事実だ。私たちは、そのことを痛切に実感した。

 社会とビジネスのさまざまな要素がとうの昔に変わっているべきだったのに、いまだに変わっていない――その現実が浮き彫りになった。

 たとえば、育児や介護などのケアを支える体制は破綻しており、メンタルヘルス関連の支援体制も十分とは言い難い。そして、柔軟性を欠く過酷な職場文化から抜け出せない人も多い。そのような企業風土は、バーンアウト(燃え尽き症候群)を生みやすいという問題がある。

 しかし、いま私たちが直面している数々の問題の中で、とりわけ深刻な問題の一つは、あまりに多くのワーキングマザーが無理難題を突きつけられていることだ。それは、子どもを選ぶか、給料を選ぶかという選択である。そして子を持つ親なら誰もが知っているように、実際にはここで選択の余地などない。

 コロナ禍の1年間で、この問題は深刻化している。米国では300万人近い女性(特に黒人と中南米系の女性)が労働市場から押し出された。わずか1年の間に、過去数十年間の進歩がかき消されてしまったのだ。

 それにより既存の育児や介護の体制が、いかに脆弱で不十分なものかが明白になった。コロナ後に経済が完全に復活し、あるいは経済が持つ可能性をすべて引き出すためには、女性たちが育児や介護の支援を受けられるようにすることが不可欠だ。

 心強いことに、企業はそうしたニーズに応え始めている。福利厚生制度が社員の人生を一変させる可能性を持っていることに気づいたのだ。特に育児や介護、働き方の柔軟性、メンタルヘルスに関しては、福利厚生制度の重要性が大きい。

 ビジネスリーダーたちと話すと、社員への支援を強化し、それを通じて会社のビジネスにも好影響を生み出すことを目的に、福利厚生戦略の見直しを計画している人が多い。

 具体的にどのような変化が起きるかを知るために、ケア・ドットコムは「福利厚生制度の未来」と題した報告書を作成した。この報告書では、全米の企業の人事責任者および最高幹部500人を対象に調査を行い、コロナ禍の教訓をもとに、どの福利厚生制度を維持し、廃止し、追加し、拡大させるつもりかを尋ねた。その調査でわかったことを紹介しよう。