(1)職場に女性をサポートする構造をつくる

 将来の仕事はこれまでより流動的になり、リモートで行う場面が増え、勤務時間は午前9時から午後5時までに限られなくなるだろう。育児支援の選択肢が増えれば、パンデミック中に担っていた教師役やベビーシッター役から多くの女性が解放されるはずだ。

 しかし、こうした新しいハイブリッドワークモデルは、仕事と家庭での責任の境界線を限りなく曖昧にし、女性に別の新しいプレッシャーをかけるかもしれない。

 企業は特に、女性のエンゲージメントを高め、所属意識を持たせる努力をする必要があるだろう。歴史的に見ても、企業は女性を男性と同じ比率では昇進させてこなかった。

 本稿執筆者の一人、アディー・スワーツの(女性の職場復帰や継続を支援する)事業から、職場で女性を支援し、従業員エンゲージメントや従業員満足度、定着率を高めるうえで、コミュニティがカギを握ることが明らかになっている。

 特に大切なのは、成功も困難も分かち合い、仕事と家庭のバランスを取りながら進もうとする時に支え合える、女性同士の小さなコホート(共通の属性を持つ集団)である。コミュニティや同僚間の支援ネットワークを形成するプログラムを採用した企業では、女性専門職のコミットメントと組織への愛着が90%増加したこともわかった。

 働く母親のサポートには育児支援インフラの提供が不可欠なのは明白だが、女性自身に対するサポートも必要だ。これがなければ、生産性が高まることも、キャリアに対する満足感を味わうこともできない。

(2)すべての親に柔軟な勤務スケジュールとリモートワークを提供する

 筆者らの調査で最も期待の持てるデータは、会社で有給の家族休暇を得られたり、在宅勤務ができたり、同僚からのサポートを得られたりする場合、女性は仕事をやめる理由として子育てを挙げることが少ないということである。

 本稿執筆者の一人であるジェイミー・ラッジは、かつて共著Maternal Optimism(未訳)で、米国の教育制度はフルタイムで働きながらの子育てに最適とは言い難いと指摘した。それでも何十年もの間、働く女性は学校を頼りに何とかしのいできた。

 平均的な学校では、正規の「学期中」である年間10カ月のうち、29日が休みになる。さらに夏休みや、登校日と就業日のずれがあり、どれもが育児支援の必要な日々である。

 雇用者は、18歳未満の子どもを持つすべての働く親をサポートできるよう、既存の制度と慣行を拡張すべきである。子育ては、子どもの成長段階によって異なる困難に直面し、親のニーズも変わる。何より、親が必要とされるかたちも変わってくる。

 リモートワークは、柔軟な働き方を必要としている従業員、とくに子育て中の親にとって、実行可能で生産的な方法であることが、この1年で証明された。おそらく、以前よりも受け入れられると期待できるだろう。

(3)従業員への福利厚生として児童手当を拡充する

 児童手当を給付したとしても、医療給付と同じような形で、企業に対する税制優遇措置はまだない。その点は理解できるが、新規に従業員を探して雇用するコストと天秤にかければ、育児支援の手段を提供して従業員を定着させることに、投資する価値があることは明白となる。

 さらに、カリフォルニア州やマサチューセッツ州では、雇用者がファンドに資金を投じ、従業員は育児や配偶者、高齢の家族の介護などのためにそのファンドを利用するという方法で、有給休暇を体系化している。このような形での育児や介護の手当給付は、医療の給付に似ている。介護や子育てといった目に見えない無償の仕事を女性や個人の貯蓄に頼らなくても、大切な人のニーズを満たせるのだ。

 企業によっては、創造力あふれる方法を編み出している。たとえば、バイオテクノロジー企業のジェネンテックは、学校の長期休暇中の子どもを対象とした上質なプログラムを、従業員が探す手助けをする団体と提携している。ジョンソン・エンド・ジョンソンは、従業員の子どもの言語療法や作業療法、心理療法や理学療法の費用を支援している。

 これらは、企業が総合力を活用してすべての働く親のために育児支援を実現した、ほんの一例である。

(4)職場か地域で育児支援の場所と監督を提供する

 黒人とヒスパニック系の家族は、パンデミックが襲う以前から、育児支援の選択肢が少ない地域に住むことが多かった。

 実際、筆者らの調査では、パンデミックが始まってからこれまでで、育児支援サービスがないことによる労働時間の損失は、有色人種の女性、大卒ではない女性、低所得世帯の女性のほうが大きかった。このグループは、週9時間以上を失い、対面での仕事が必要なエッセンシャルワーカーとして働いていることが多かった。

 こうしたマイナスの影響を受けやすいグループが補完的な育児支援サービスを利用できた場合、パンデミック下での週当たりの労働時間の損失が減少した。雇用者が共同出資して、従業員のために職場か地域で質の高い育児支援の場を提供できれば、従業員の生産性は高まり、ロイヤルティも高まるだろう。母親にとって、子どもを職場に連れていくことができ、子どもが満足いくケアを受けて、安全で、何かに熱中していると知るだけで革命的なのである。

 働く親についての調査では、母親も父親も現在、かなりの苦痛を経験し、研究者の使用するメンタルヘルス尺度のK6では、3分の2の人のスコアが、強度の心理的苦痛の範囲に該当した。

 育児は家庭の問題ではなく、ビジネスの問題である。どのように働くか、いつ働くか、そして多くの人にとって、なぜ働くかに影響する。将来は、雇用者が育児支援を提供することが、どこで働くかにも影響を与えるかもしれない。

 上質な育児支援を提供する雇用者は、競争においてみずからを差別化できるだけでなく、「ずっとそこにいたくなるような」給付で定着率を向上させるだろう。現在の育児支援の環境に大きな愛情と信頼を寄せている従業員は、転職しようとあまり思わなくなるからである。

 働く親たちが家族のため、経済全体のために働き続けるのに必要な育児インフラをどう構築するかは、企業の創造力にかかっている。


"Childcare Is a Business Issue," HBR.org, April 29, 2021.