速い成功
一般的に、分散したチームは同じ場所にいるチームと比べて、成功に至るまでの時間とイテレーションの回数が少ない。これは、組織が異なる、あるいは地理的境界を超えて調整しなければならない時、そうした調整が難しいことをチームメンバーが認識しているという事実を示している。
そのため、境界を超えて仕事をする価値があるとチームがみずから判断するのは、成功を信じるプロジェクトに限定している可能性が高い。そして、成功するためにいっそうの努力をする。
これとは対照的に、同じ場所にいるチームは、プロジェクトを完了するための調整に特別な努力をする必要がない。効率的に仕事をするインセンティブが少ないのだ。また、プロジェクトにかかる調整コストが低いと考えるため、プロジェクトを選択する時点で、リスクを取ることに対してより積極的な可能性がある。
遅い失敗
今回の調査対象の失敗したプロジェクトについては、同じ場所にいるチームのほうが、分散したチームよりも早く別のプロジェクトに移行した。分散したチームはより多くのイテレーションを行うので、失敗するプロジェクトに取り組み続けたのだ。
これは、分散したチームのほうが、自分たちがよいと信じるアイデアへの思い入れが強く、優れたチームはいかなるハードルも乗り越えると考えているからかもしれない。
また、分散したチームはそうでないチームに比べて、プロジェクトの初期段階に多くの労力を費やしていることが観察された。これは「埋没費用の誤謬」の犠牲になり、エスカレーション・オブ・コミットメントに陥るリスクがある。
さらに、失敗した時に調整コストが発生することも考えられる。研究によれば、分散型チームのメンバーは、失敗に関するコミュニケーションを取ることや、プロジェクトを断念する時期を合意することが困難になる可能性がある。
一方、同じ場所にいるチームは、プロジェクトの進捗状況を話し合うために集まることやプロジェクトを断念する時期について合意することが、より容易な可能性がある。また、分散していないチームは新たなプロジェクトに着手しやすいため、失敗プロジェクトを見限ることに消極的ではないのかもしれない。
アントレプレナーシップの研究では、チームがリスクを取り、学習するために頻繁かつ即座に失敗する、いわゆる「速い失敗」を受け入れるのを奨励することの利点が示されている。筆者らの研究は、この推奨事項は限定されることを示唆している。分散したチームは「速い失敗」が得意ではない可能性があるのだ。
また、分散したチームが失敗プロジェクトにしがみついたままだと、コストがかかる。チームメンバーは、学び、素早く次に移ることができず、その間に別のプロジェクトへの投資に充てられるはずのリソースを消費してしまう。言い換えれば、分散したチームの実質的なコストは、チームが手放したがらない失敗プロジェクトが原因だ。
では、企業はどのようにして、分散したチームにおける失敗のコストを抑えることができるのか。