しかし、2つの懸念事項を挙げるマネジャーも少なくなかった。2020年の1年間を通して数多くの組織と対話し、この2点について聞くうちに、筆者は自分の助言を変えるに至った。いまは、在宅勤務をする日は従業員が選ぶのではなく、むしろ選ばないほうがよいと助言している。

 第1の懸念事項は、在宅勤務とオフィス勤務が混在するハイブリッドチームを管理する難しさである。オフィスにいるイン・グループと在宅のアウト・グループの2グループに分かれることへの不安は尽きることがない。

 たとえば、在宅の従業員はオフィスの会議室にいる人同士が目配せしたり、低い声で話したりしているのが見えたり聞こえたりするが、実際に何が起きているのか正確にはわからない。

 こうした事態を避けるために、オフィスにいる人たちにも各自のデスクからビデオ会議に参加するよう指示できるが、それでも在宅の従業員は仲間外れになっているように感じるという。会議が終われば、オフィスにいる同僚は廊下で立ち話をしたり、一緒にコーヒーを飲んだりすることを知っているからだ。

 第2の懸念事項として、ダイバーシティに対するリスクがある。パンデミック後に在宅勤務したいと考えているのはランダムではなく、特定グループの従業員であることが明らかになっている。

 たとえば、筆者らの共同研究では、小さな子どもを持つ大卒者のうち、フルタイムで在宅勤務をしたいと考えている女性は男性よりも50%近く多い。

 同僚がオフィスで勤務している時に在宅勤務をするのは、キャリアに深刻なダメージをもたらしかねないというエビデンスがあることを考えれば、これは憂慮すべき事態である。

 2014年に筆者らが中国のある多国籍企業を対象に実施した調査では、250人の協力者を週4日在宅勤務のグループと週5日オフィス勤務するグループに無作為に分けた。1年9カ月が経過した時点で比較すると、在宅勤務グループの従業員はオフィス勤務グループの同僚に比べて、昇進率が50%も低かった。

 在宅勤務が昇進の大きな足かせになるという事実は、筆者が過去何年にもわたってマネジャーから聞かされてきた内情と一致している。在宅勤務をしている部下が「オフィスの実情を把握できていない」との理由で昇進の対象から外されると、マネジャーが打ち明けることがしばしばある。