これらの事実を踏まえると、在宅勤務の予定を従業員自身が決めることで、ダイバーシティの危機が深まるおそれがあることがわかるだろう。

 独身の若い男性が週5日出社して次々と昇進していく一方で、小さな子どもを持つ従業員、特に女性は週何日か在宅勤務を選ぶ代償として昇進が遅れる。会社はダイバーシティの喪失、そして潜在的に大きな法的問題の両方を抱え込むことになる。

 こうした理由から、筆者はかねてからの見解を変え、マネジャーがチームの在宅勤務日を決めるべきだと企業に助言するようになった。

 たとえば、マネジャーが在宅勤務日に水曜と金曜を選んだ場合、それ以外の日は全員が出勤する。唯一の例外は新入社員で、最初の年は他のチームメンバーより週に1日多く出勤することで、他の新入社員とのつながりを築けるようにする。

 もちろん、オフィススペースを効率よく活用したい企業は、どのチームがどの日に出勤するかを一元管理する必要があるだろう。そうでなければ、誰もが在宅勤務を希望する月曜と金曜はオフィスが無人になり、週半ばは混雑することになる。上手に調整するには、よく一緒に仕事をするチーム同士が少なくとも週2日、同じ日にオフィスで働けるようするのがよい。

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 コロナ禍は、私たちの働き方を変革する契機となった。これにより、企業の生産性がいっそう高まり、従業員の幸福度も向上する可能性があることを、筆者らの調査は示している。

 しかし、多くの例に漏れず、この変革を継続していくことは容易ではない。企業に求められているのは、従業員のダイバーシティと真のインクルージョンを維持する、経営トップのリーダーシップである。


"Don't Let Employees Pick Their WFH Days," HBR.org, May 25, 2021.