
データドリブンの意思決定が有効であるのは間違いないが、それが万能薬でないことも事実である。なかでも状況が目まぐるしく変化し、信頼性の高いデータを十分に収集できない時は、経験に基づく直感に従うことでよりよい結果を導ける可能性があることが、筆者らの研究から明らかになった。
データドリブンの意思決定は、現代の経営におけるゴールドスタンダードと見なされ、それには十分な理由がある。
利用可能なデータの爆発的な増加とデータサイエンスの急速な進歩により、マネジャーは自社のビジネスについてかなり多くのことを知ることができるようになった。この知識をうまく活用すれば、ビジネスのあらゆる面でよりよい意思決定ができるはずだ。
ほとんどの企業が、かつてなく豊富なデータを最大限活用するために、アナリティクス能力の構築に躍起になっているのはそのためだろう。たとえば、フォーチュン1000企業を対象とした最近の調査によれば、91.9%の企業がデータイニシアティブへの投資を増やしている。
ビッグデータの可能性に反論の余地はないが、それはすべての意思決定の万能薬だろうか。言い換えれば、データやアナリティクスを重視することが、状況によっては裏目に出る可能性があるのではないか。筆者らは最近の研究で、この点について調査した。
筆者らの直感では、データドリブンの意思決定は、極度に不確実な状況下では逆効果になる可能性があると考えられた。そうした場合、信頼性の高いデータを収集することは非常に困難であり、不可能なこともある。
『ハリー・ポッターと賢者の石』をめぐり、最終的にブルームズベリー・パブリッシングが初版500部を発行するまで、12の出版社がその可能性を見抜くことができなかったのもそれが理由と言える。同書は非常に革新的だったため、当然ながら、その可能性を的確に評価するための事前データが存在しなかったのだ。