
コロナ禍の中、従業員のバーンアウト(燃え尽き症候群)の問題がますます深刻化している。企業は、パートナーから子育ての支援を得られないシングルペアレントほどバーンアウトに陥りやすい点に目を向けて、個人ではなく組織の問題として対処しなければならない。本稿では、ひとり親家庭が仕事と子育てを両立できるように、企業が実践すべき6つの取り組みを紹介する。
職場におけるバーンアウト(燃え尽き症候群)にどのように対処すべきかについて、よく見受けるアドバイスは表面的なものに終始している。スパに行きなさい、昼寝をしなさい、自分を労りなさい、といった具合だ。燃え尽きはあくまで個人の問題であり、それに対処するための解毒剤は、セルフケアによりストレスを和らげることしかない、ということらしい。
しかし、職場での燃え尽きは組織の問題と位置づけるべきだ。したがって、職場のあり方全体を視野に入れた解決策が必要とされる。この点は、ある特定の集団にとりわけ当てはまる。その集団とは、ひとりで育児を行うシングルペアレントたちである。
米国は、シングルペアレントの世帯で暮らす子どもの割合が特に高い国の一つだ。すべての子どもの4人に1人近く、数にして約2200万人がそのような世帯で生活している。親が離婚したり、別居したり、片方の親が死亡したりしたケースもあれば、親がそもそも未婚だったり、片方の親が不在だったりするケースもある。
ひとり親の42%は白人で、28%が黒人だ。ひとり親世帯で生活している子どもの80%は、シングルマザーの家庭で暮らしている。そのような母親のほとんどは仕事を持っている。
シングルマザーの81%は、コロナ禍以前の2020年1月の時点で職に就いていた。しかし、シングルマザーの労働参加率はコロナ禍の中でほかの層よりも大きく落ち込み、回復する速度も極めて遅い。
「企業はシングルペアレントの存在を認めるべきです」と、ニューヨークの公共ラジオ局WNYCの番組『テイクアウェイ』の司会者でありジャーナリスト、そしてひとりで子どもを育てているタンジナ・ベガは述べている。
「多く企業は、すべての親がカップルで子育てをしているという前提に立ち続けています。そのため、子どもを持つ従業員が仕事で子どものそばにいられない時は、パートナーが代わりを務められると思い込んでいるのです。シングルペアレント特有の苦労があることを、企業は認識しなくてはなりません」
すべての従業員が家庭に育児のサポートシステムを持っているものと決めつけている会社は、従業員に対する時間的な要求が厳しくなる。しかし、シングルペアレントはそうした要求に対応しにくい場合がある。
シングルペアレントは多忙を極める。家庭で家事や育児に追われる一方で、年中無休で1日24時間、職場での役割を果たすことも要求されるのだ。こうした過酷な日々を送っていれば、感情的・身体的なウェルビーイングに及ぶダメージは大きい。
そして燃え尽き――つまり、消耗感を抱いたり、物事に無関心になったり、仕事のパフォーマンスが落ちたりする状況――に関して言えば、その根本的な原因は個人ではなく、組織と職場の文化にあることが研究を通じて明らかになっている。したがって、システム全体を変える以外に解決策はないのだ。
このような燃え尽きの問題に対処するために、企業は以下の点を頭に入れるべきだ。