●データドリブンの的確な評価

 バイアスを認識して、それを減らすためにリーダーとしてやるべき役割を理解することは重要だが、そこで終わってはいけない。その理解に基づいて行動し、従業員の日々の経験に測定可能な影響を与えるのだ。

 多くのリーダーは、職場の文化にバイアスや排除がないかどうかを評価すると、人々を動揺させるのではないか、すぐに解決できると期待させるのではないかと躊躇する。しかし、このような懸念はあっても、バイアスについて直接的な質問をすることにより、誰もが抱く疑問に答えやすくなる。すなわち、自分はどうすればよいのか、という疑問だ。

 まず、女性や有色人種の障壁になっている具体的なプロセスを理解することから始めよう。こうした障壁は、これまでは個人のインポスター症候群として片づけられていたかもしれない。

 多くの企業は新製品を発売する際、市場調査や入念なテスト、課題や障壁の特定、それらを克服するための目標設定、顧客からのフィードバックの収集など、厳格な手段を用いる。人材やインクルージョンをマネジメントする際も、同様のアプローチができるはずだと、チラジは提言する。

 組織は莫大なリソースを費やして、さまざまな問題を理解する。私たちのシステムや慣行が、チームに所属する女性や有色人種にどのような損害を与えているかを理解するためにも、これらのリソースを利用できるだろう。

 その出発点となる2つの取り組みを提案する。1つ目は、匿名のフィードバック調査で従業員の感情を評価することだ。この調査には、傾向を把握するために年間を通じて時間をかけて実施するものと、いつでもフィードバックを共有できる「常時接続型」の2つがある。

 従業員が組織にどのくらい貢献できると感じているか、どのくらい成長して学べると感じているかといった質問と、貢献や学習を阻むような障壁に関する質問を含めること。これらのデータを、(多くの企業が現在行っているように)ジェンダーによって評価するだけでなく、可能であれば人種、ジェンダー、民族、障害の有無など、疎外されているアイデンティティの交わりによっても評価する。

 有色人種の女性、特に黒人女性が、組織に自分の居場所がない、あるいは成長できるとは思えないと伝えてきたら、「炭鉱のカナリア」として受け止める。黒人女性が組織文化をどのように経験しているかということが、会社のインクルージョンレベルを測るリトマス試験紙になるかもしれない。最も過小評価されている人々の経験をデータの外れ値として見るのではなく、それらを軸にして組織改革の次のステップを推進する。

 2つ目の取り組みは、組織のパフォーマンスの評価基準と昇進に要する平均期間についてだ。

 過去10回の昇進のほとんどが白人男性で、彼らが昇進するまでの平均期間が女性や有色人種に比べてはるかに短い場合、彼女たちが「私はここで昇進するために必要なものを持っているのだろうか。ここは私のいるべき場所だろうか」と考えるのも当然だ。あなたの会社が、測定可能な行動やスキルがなくても、「エグゼクティブのプレゼンス」や「リーダーシップのスキル」など漠然とした特性に見返りを与えているなら、昇進の決定にバイアスが入り込みやすい。

 このような昇進基準の結果、白人男性だけが昇進しているなら、そのプロセスは体系的かつ人種的に不公平である。有色人種の女性が自分にはそのような特性がないと考えるのも無理はなく、自己不信がじわじわと積み重なって限界を超えるだろう。

 残念ながら、マネジャーは多くの場合、組織レベルでこの問題に取り組むのではなく、従業員が自分に疑問を抱いても見過ごし、自己不信に対する解決策をサポートするにすぎない。しかし、そうではなく人種やジェンダーに関する言葉への感度を高め、具体的な成果やスキル、行動を測るような基準をつくり、それをもとに昇進を決めよう。