●「私たちの仕事」と「私の仕事」のバランスを取る

 コロナ禍は、オフィスの目的と意味について再考を促してきた。そして多くのリーダーは、オフィスはコラボレーションの場であるという結論に達している。

 筆者のハイザーが勤めるゲンスラーのゲンスラー・リサーチ・インスティテュートは、コロナ禍の最中に調査を行い、フルタイムの在宅勤務者のコラボレーション時間が平均で37%低下したことを明らかにした。その結果、リーダーは当然ながら、コラボレーションの強化に力を入れるようになった。

 また、スチールケースの調査では、リーダーのほぼ3分の2が、対面でもハイブリッドでもコラボレーションの空間を増やしたいと考えていることが示されている。

 しかし、コラボレーションにおいては、グループワークだけではなく、一人の作業も必要になる。有効なコラボレーションは、チームが集まって作業した後、解散して個人で集中する(仲間のアイデアを分析し、自分に与えられたタスクをこなす)といった満ち引きがある時に起きるものだ。

 チームで過ごす時間が長すぎて、1人で集中する時間が足りなくなると、集団思考に陥る可能性がある。したがってオフィスをデザインする時は、「私たち」にばかり振り子が振れて「私」のスペースというニーズを忘れてしまうことがないように、バランスを取る必要があるだろう。

***

 在宅勤務は出社勤務に比べて生産性が高いどうか、まだ決定的なことはわからない。しかし、この1年の間、従業員は自宅に仕事の妨げになる要因がない場合には、在宅勤務のほうが生産性は高いと回答している。

 その一方で、オフィスで適切なプライバシーを確保できる場所をつくることも重要だ。敷地内の遠く離れた部屋に移動したり、複雑なテクノロジーを使いこなすことに時間を取られたりせず、ある働き方から別の働き方に簡単に切り替えられるようにする必要がある。

 出社勤務が再開された時、組織は在宅勤務よりもよい体験を提供しなければならない。そのためには、従業員がタスクに応じて働き方を変えることができる、さまざまなスペースを用意することが必要だ。

 ここで「様子を見る」ことを選択するなら、「以前と何も変わらないオフィスでは、以前と異なる働き方をサポートできない」という従業員の不満につながるおそれがある。そうなれば、出社勤務再開によって、従業員を同じ場所に集めることで得られるはずの競争優位が危うくなる。

 組織が前進し、適応し、柔軟になり、繁栄できる職場を生み出すことができれば、最高の人材を引き寄せて維持し、イノベーションと成長の恩恵を受けることが可能になる。未来のオフィスは、「いま、この瞬間」を最大限に利用する組織に競争優位をもたらすだろう。

 再び職場に戻った時、いままでとは様子が違っているだろう。それは、よいことなのだ。


"4 Strategies for Building a Hybrid Workplace that Works," HBR.org, July 22, 2021.