●彼らのエネルギーの方向を変える

 学者のレイチェル・クラインフェルドは、世界の紛争に関する著書A Savage Order(未訳)の中で、国や地域がどのようにして蔓延する暴力から抜け出すかを解説している。

 政府は最初のステップとして、軍事的指導者と取引をすることが多い。わずかな平和と引き換えに、コンフリクトアントレプレナーに政治的権力を与えるのだ。

 こうした「汚れた取引」の目的は、改革を担う人々が、汚職をはじめ、組織に蔓延する問題を解決する時間を稼ぐことだ。それは賭けだが、コンフリクトアントレプレナーを無視するほうが、危険は高まる。

 企業であれば、コンフリクトアントレプレナーのエネルギーを、互いに関心のある生産的な何かに向けることを意味する。強制するのではなく、彼らに選択肢を与えるのだ。

 メディエーターとして、コンフリクトアントレプレナーのパーソナリティを持つ人と関わるエディによれば、多くの場合、プロのコーチングを受けるのがよい方法だという。「未来にフォーカスすることだ」と、彼は助言する。

 メーガン・ハンターは、ハイコンフリクトを抱える企業に対して数多くの研修やコーチング、仲介を提供している(エディとの共著も複数ある)。

 ハンターは、大規模な同族経営の企業が倒産の危機に瀕した時、言い争う家族のメンバーに対して、一緒にミッションステートメントを作成するように依頼した。彼らにとっては初めての経験だったが、その効果はメンバーのみならず、ハンターにとっても驚くべきものだった。

「彼らが同じ部屋にいて、口汚い言葉を使わず、誰も外に飛び出さなかったのは初めてだった」と、ハンターは言う。「彼らはそのミッションステートメントを、とても誇りに思っていた」

 この方法がいつもうまくいくとは限らない。だが、エネルギーの方向を変えるのは試す価値があると彼女は言う。「怒鳴り合うのではなく、一緒に意思決定をしてもらうのだ」

 ●「ガードレール」を敷く

 最善の防御策は、よいコンフリクトの文化だ。そこでは、質問がなされ、率直な意見の相違が奨励され、誰もが基本的レベルの良識を持って行動する。

 しかし、よいコンフリクトは自然に起きるものではない。それには習慣や境界線が必要で、緊張を避けたり、緊張に飲み込まれたりするのではなく、緊張を受け入れる方法も欠かせない。そのためには、従業員とともに「交戦規定」、すなわち誰もが納得できる行動規範をつくらなければならない。

 アリゾナ州にあるエイブル・エアロスペースのCEOを25年間務めたリー・ベンソンは、パフォーマンスと好ましい行動を促進する共通の方法論を浸透させることで、コンフリクトアントレプレナーのおよそ3人に2人の態度を改めることができるとわかった。

「全員が行動規範を理解していれば、彼らは好き勝手にはできない」と、彼は筆者に語った。「彼らはコミュニティの一員になりたいと思っているため、ほとんどの場合、変わることができる」