●分散型(国際化レベル:低い、タスクコンテクスト:取引的)

 このモデルでは、ほとんどのタスクが大量でルーチン化されているため、デジタル化しやすい。したがって、組織自体が分散することに適している。どこで仕事をするかは、人材の利用可能性とコストに基づいて決まる。

 一般に、このモデルは数カ国まで拡大するが、それ以上増えることはない。必要に応じて、プロダクトの市場拡大を図るにしても、それぞれの市場に物理的なプレゼンスを持たずにアクセスできる。

 たとえば、プロダクトマネジャーやマーケターのオンラインコミュニティとして世界最速の成長を遂げているロードマップ・ドットコムを買収したソフトウェア会社のアハ!は、設立時からオフィスを持たない。従業員は全員、米国全体と米国以外のいくつかの場所に分散している。

 この組織モデルは、既存企業にも恩恵をもたらすと考えられる。ある高度にルーチン化された製薬会社のバイスプレジデントは、特に医薬品の特許が切れてイノベーション活動が以前のように必要ではなくなった時、これが選択肢の一つになると見ていた。

 ●グローバル・バーチャル型(国際化レベル:高い、タスクコンテクスト:取引的)

 このバーチャルな組織モデルでは、世界中の人材にアクセスすることができる。特定の人材や労働コストの好ましさを重視するのではなく、事業としてグローバルなプレゼンスが必要だが、1カ国当たりの従業員数は少なくて済む企業に適したモデルだ。

 たとえば、10億ドル企業となったスタートアップのオートマッティックでは、1300人を超える従業員が79カ国に分散し、操る言語の数は99種類に上る。

 このモデルでは、多くの国に居住する従業員が、グローバルだがバーチャルな組織の一員としてともに働く。地理的な境界を超えてエンゲージすることで、自分の働く場所は基本的に自分で選ぶことができる。また、より深い結びつきを育てるために、年1回、実際に顔を合わせる機会が用意されている。こうした状況を踏まえると、物理的なオフィスを構える価値はほとんどないだろう。

 このモデルを採用する組織は、関係的タスクの一部をバーチャルに移行するうええで先駆的な働きをしているかもしれない。テクノロジーと新しい仕事のやり方をクリエイティブに応用して、通常であれば物理的に同じ場所でやらなければならないタスクも、リモートでカバーできるようにするのだ。

 筆者らが話を聞いたリーダーの一部は、このアプローチを熱烈に支持し、それによってもたらされる柔軟性と適応性を歓迎していた。ただし、自社でこのモデルを採用するのは、まだ先になるかもしれないことは認めた。

 このカテゴリーで他社の手本となるのは、オートマッティックのように、現時点でのスタートアップ企業や急成長を遂げているスケールアップ企業だろう。

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 リーダーは自社に適したモデルを選び、グローバルに分散するリモートワークがもたらす機会を活用すべきだ。

 本稿で紹介した組織モデルが、既存企業とスタートアップ企業の両方で採用されることで、メインストリームになると筆者らは考えている。未来に備えるために、あなたの会社にとって最善のモデルはどれだろうか。


"Which Hybrid Work Model Is Best for Your Business?" HBR.org, August 24, 2021.