意外なところからも支援を受け入れる
こうした大規模災害の重大性は瞬く間に拡大した。現場とその周辺だけでなく、リーダーたちは複雑な課題にさらに直面していた。
WTCから発生する有毒物質によって、消防署、自家用車、消防隊員の自宅で二次汚染が起きるのをどう防ぐのか。縦に広く伸びたニューヨークでは日々、一日中、消防隊員が消火活動や緊急事態の対応に当たらなくてはならなかった。そのため、特に指導的立場の人員を補充する必要があった。
失われた経験を補い、個人や集団のトラウマを治療する必要があった。消防局の再建が必要だった。
答えは自分たちで導き出したものもあれば、意外なところからもたらされたものもあった。たとえば、FDNYはインシデント管理について知ってはいたが、こうした規模でどう実践すべきかはわからなかった。
そこに支援と指導、将来のモデルを提供したのが米国森林局(USFS)だ。「スモーキーベアー」と呼ばれる彼らは、林業用の帽子と木のエンブレムが入った緑色のユニフォームを着て数日内に現れた。
USFSは、20年前から国内の大規模で複雑な火災に対処するためインシデント管理チームを擁していた。同局職員らはすぐにFDNYのプロジェクト管理の中心的なアドバイザーとなり、結果的に約9カ月間従事した。
それから数年間、FDNYはUSFSのインシデント管理の手法を学ぶために、文字通り学校に通った。FDNYの職員は教室で学び、モンタナ州からアラスカ州まで、USFSのチームと一緒に研修を受けた。
そうしてFDNYは全国的なインシデント管理のリソースに変わり、ハリケーン「カトリーナ」の発生後にはニューオリンズで、巨大暴風雨「サンディ」の際にはニューヨークで、そしてコンドミニアムのチャンプレイン・タワーズが崩壊したフロリダ州サーフサイドでも支援要請に応えた。2021年8月には、モンタナ州で発生した大規模なウッズクリーク火災とバルシンガー火災の消火活動を担った。