企業はいますぐ、自社のカーボン・ショートポジションに対処し始める必要がある。そのためのシンプルな5つのステップを以下に紹介しよう。

(1)ポジションを炭素ベースで考える。会社の事業活動とサプライチェーンの総排出量と炭素強度(収益1ドル当たりのトン数)を算出する。計算にあたっては、スコープ1、2、3の排出量を用いること。これは近く、業績報告書の要件になる可能性が高い。

(2)設備投資プロジェクトがない場合、収益が増加するに従って、炭素強度が高まるかどうかを判断し、未来の排出量すべてをモデル化する。

(3)適用する価格体系を定め、それを採用する時期を決める。基本的な方法としては、2022年は50ドル、2024年は100ドル、2026年は200ドル、2028年は300ドルと想定する。これは、先物価格の上昇を予想した一例にすぎない。複数のシナリオを用いて分析することができるだろう。

(4)各年の予想排出量に先物価格を乗じて、年間総コストを算出することにより、未来の排出量に価格をつける

(5)「カーボンキャッシュフロー」を差し引く。自社の資本コストを未来の炭素価格から差し引き、総経済効果(TEI)を現在価値で算出する。

 総経済効果を算出すれば、企業は今後予定されている一連の設備投資プロジェクトを評価し、現時点でどの炭素排出を回避すべきか判断することができる。

 なかには、純粋な効率改善を目的としたプロジェクトで、炭素価格が安価であっても、実行することが理にかなっているものもあるだろう。

 リードタイムが長く、炭素強度の低いプロジェクトで、いま始めれば、炭素価格が上昇する将来には排出量を減らせるものもある。炭素強度の高いプロジェクトでは、現在は計画段階に留めて、タイミングと炭素価格のレベルがより明確になった時に着手すべきものもあるかもしれない。

 企業によっては、二酸化炭素排出量を相殺によりゼロにするカーボンオフセットを選択する場合もあるだろう。ただし、これはまだ定着しているとはいえず、依然としてかなりのリスクが残されている。

 現時点では、炭素価格がゼロの国が多いかもしれないが、それが長続きする可能性は低い。企業が自社のカーボン・ショートポジションを、さまざまな価格モデルに基づいて把握しておくことは、強力なツールとなる。

 この手法を採用すれば、世界がネットゼロ(炭素排出量ゼロ)に移行する中で、自社の戦略と資本配分をどう変えるべきかという問題に、経営陣や取締役会の目を向けさせることができるだろう。企業が投資家にそのプロセスを開示すれば、よりいっそう強力な役割を果たすはずだ。

 まずは、上述した5つのステップに対する自社のアプローチを明確にしたうえで、効率改善プロジェクトや設備投資プロジェクトについて説明するのがよいだろう。適切な方法で実行できれば、炭素強度と絶対的炭素排出量の両者を削減するとともに、脱炭素化する世界で株主価値を守ることができる。

 自社のカーボン・ショートポジションの管理がどこまで進捗しているかという情報は、四半期ごとに報告され、業績発表にも含められるべきだ。

 企業が2050年までにネットゼロを実現し、自社のカーボン・ショートポジションに対処する長期計画を策定する必要があるのは確かだ。しかし、自社が直面するリスクと計画の進捗状況について、短期ベースで情報を更新する必要もある。それはもはや、「次のCEOの仕事」ではない。


"Carbon Might Be Your Company's Biggest Financial Liability," HBR.org, October 07, 2021.