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ポストコロナの時代を迎えつつある現在、マネジャーは「どうすれば従業員のモチベーションを高め、成功を支援できるか」に頭を悩ませている。パンデミックという異例の状況を受けて、従業員が新たな状況に適応し、進化を遂げ、組織だけでなく自分自身も成長していると実感できる状態をつくるために、マネジャーは何をすべきなのか。本稿では、心理的契約、アイディールズ、リーダーシップの観点から、従業員が不確実性に対処し、成功するために必要な資質を育み、新しい職場の現実を乗り切るためにマネジャーが実行すべき3つの戦略を論じる。


 企業が、ポストパンデミックの時代に入りつつあることを実感し、ニューノーマルに向けた計画を立てる中、マネジャーや組織のリーダーは、目先の判断と近い将来に関する決断を迫られている。

 そこには、大きな問いが残されている。すなわち「在宅勤務と安全な出社勤務との間でバランスを取りつつ、従業員のモチベーションを高めるには、どうすればよいか」だ。

 従業員が創造性を高め、革新的なアイデアを考案することを促しながら、組織と従業員の双方が新しい職場の現実にうまく対処するのを助ける方法はあるのだろうか。あなたがこうした問いに頭を悩ませているとすれば、それは実のところ「どうすれば従業員の成功を支援できるか」を考えているに等しい。

 従業員が成功しているということは、彼らが変化に適応し、進化を遂げ、自分自身も変革していると実感できている心理状態を意味する。研究によれば、成功している従業員はみずからの仕事に情熱を持ち、継続的に「自分の存在感を示して、頼りにされる」ことに意欲的だ。こうした資質は、ストレスや不確実性に対する緩衝材として不可欠なだけでなく、不確実性の時代に対処し、成功するための秘密兵器にもなりうる。

 コロナ禍が異例の事態だという点では、ほとんどのマネジャーの意見は一致するだろう。すなわち頻度は低いが、重大な被害を引き起こす出来事だ。パンデミックの当初は、誰もが何を参考にすればよいのかわからず、手探りで仕事を進めていかなくてはならなかったはずだ。

 しかし、ポストパンデミックという現実を迎えつつあるいま、はっきりしていることが一つある。それは、コロナ禍はもう繰り返されることのない一度限りの出来事だと見なせば、将来の異常事態(世界的なパンデミックでないことを祈るが)に対処する方法を学ぶ、貴重な機会を逃してしまうということだ。

 一般的な認識に反して、従業員は危機がどう拡大していったかよりも、組織が危機にどう対処したかに注目する。したがって、従業員がマネジャーの行動をどう解釈したかに注意を払うことが欠かせない。

 筆者らは心理的契約アイディールズ[編注]リーダーシップに関する広範な研究を行い、従業員の成功を実現するために必要な3つの組織戦略を特定した。すなわち「期待の調整」(recalibrate expectations)、「コミットメントの再確立」(reestablish commitment)、「能力の再構築」 (rebuild capacity)である。

 本稿ではこれらを「3つのRe」と呼ぶことにするが、それらを実行する前に、従業員のセンスメイキングを理解する必要がある。

センスメイキングの重要性

 センスメイキングとは、人が環境や他者と関わる中で、それに意味を与える心理的プロセスを指す。私たちは誰もが、自分の経験に意味を与える過程で、センスメイキングを行っている。

 仕事を含めて、ほとんどの経験はルーチン化されているため、センスメイキングの必要性はほとんどない。しかし、コロナ禍のような異例の状況においては、物事を簡単に解釈したり、対処したりすることが必要になる。

 人は常に、自分自身をセンスメイキングの中心に据える。そのため、あなたの組織の従業員はいま、ポストパンデミックの職場を理解しようと多大なエネルギーを費やし、努力しているところだ。そして、「これは自分にどのような影響を与えるのだろうか」と自問している。

 つまり、いまはマネジャーと組織にとって、その最も重要な資産である従業員を育てる、またとない機会だ。そのためには、従業員が「自分には価値があり、大切にされている」と感じられるようにしなくてはならない。

 これが「3つのRe」の本質であり、新しい革新的な機会を意義深く、かつ思いもよらぬ方法で探し出す余地を従業員の中に生み出し、ニューノーマルの状況で成功することを可能にする。