コミットメントを再確立する

 従業員のコミットメントを再確立するには、マネジャーが何らかの判断を行った際に、組織の代理人として、その決定を下した理由と経緯を正直に説明する必要がある。そのような説明がなければ、従業員はみずからセンスメイキングを行い、その空白を自分自身の期待で埋めようとする。これは組織に不利益をもたらすことが多い。

 コロナ禍のような異例の状況において、従業員は社会的比較を行う。これは、自分の状況を実在あるいは架空の人物と比較する心理的プロセスを指す。そして比較を行った結果、従業員は自分が不公平な扱いを受けたと思い込み、組織に対してネガティブな見方を持つようになることが少なくない。

 コミットメントを再確立すれば、このような好ましくない判断を防ぐ助けになる。マネジャーは危機管理対策を公式に説明することで、従業員との間に信頼関係を構築し、彼らの信用を獲得することができるだろう。

 コミットメントを再確立する方法は3つある。

1. 抑制的な説明:マネジャーが特定の措置を講じた理由を率直に説明する。たとえば、「地域の保健機関の指示に従った」と伝える。

2. 正当化:当局の資料に言及し、マネジャーの行動が正当なものであることを示す。たとえば、米国疾病予防管理センター(CDC)のガイドラインや行動の手引きとなった調査結果を挙げる。

3. リフレーミング:現在の状況よりも、もっと悪い結果になっていたかもしれないことを強調する。たとえば、一部の国の企業で行われている極端な隔離措置を例に出す。

 コミットメントを再構築するためには、透明性が欠かせない。筆者らの研究では、ある被験者が「上層部から現場の社員まで、誰もが私生活と仕事上で直面した困難を共有し、全員が関わりを持つことが欠かせない」と雄弁に語った。このような組織としての行動は、「全員でこの局面を乗り越えよう」というメッセージになる。

 また、共感や思いやりの価値を強化する。従業員の道標となるのは予測不可能な状況ではなく、共感や思いやりの価値だと強調できるからだ。このように正常化に努めることで、従業員は不確実な状況の先に目を向け、生産性の向上に努めることができるだろう。