職場のジェンダー

 2021年に最もよく読まれた論考から浮かび上がるトレンドの最後は、職場のジェンダーにまつわる知見に対する強い関心だ。ジェンダー平等がもたらす無数の恩恵、そして構造的な不平等が依然として女性の活躍を妨げていることが、一貫して関心を集めている。

 興味深いことに、これらの問題に言及した論考の中で最も読まれた2本は、いずれも機械学習を活用することで大規模な定性データの分析を行い、それがなければ得られなかった可能性がある洞察を提示している。経営研究において、AI(人工知能)ツールの果たす役割が拡大していることを示したものだ。

 その中の1つが「経営幹部に女性が増えると、企業の意思決定はどのように変わるのか」である。この論考では13年間にわたり163の多国籍企業を対象に調査を行い、M&Aの比率、R&D投資率、トップチームが発信した会社資料における自動言語分析の結果を検証している。

 研究の結果、女性が経営幹部に加わると、企業は変化に対してよりオープンになり、リスクに対してはより慎重になること、またM&AからR&Dに重点が移ることが明らかになった。加えて、女性がトップマネジメントチームに十分に統合されている時、すなわち女性の経営幹部がすでにチーム内に存在し、新たに登用する経営幹部の数が少ない時ほど、女性を起用することのインパクトが大きくなると判明した。

 男性従業員の昇進のペースが女性従業員に比べて速いことは、いまなお変わらない。しかし、このような格差を生み出している根本要因を定量化するのは難しい。「女性は男性のように昇進に役立つフィードバックを受けていない」の筆者らは、従業員が受け取った1000件以上のフィードバック(書面による自由記述形式で提供されたもの)を機械学習で分析した。

 そして分析の結果、男性に向けたフィードバックでは、ビジョンを形づくり、社内政治を利用し、リーダーの地位を求め、自信をより前面に押し出すことが奨励されていた。一方、女性に向けたフィードバックは、実行に力を入れ、社内政治に対処し、周囲とうまくやり、もっと自信を持つことを奨励されていた。

 この結果は、女性に対するフィードバックが一見すると好意的なものだとしても、男性に対するフィードバックと比べて実際の行動の参考になりにくく、リーダーに昇進するうえではそれほど役に立たないケースが多いことを示している。

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 結局のところ、研究の良い点も悪い点も特異性にある。読者は明快で単純な答えを求めている一方で、研究に裏付けられたアプローチの場合、読者自身がそのニュアンスや限界を認識することが求められる。

 しかし、2022年という新しい年、願わくは明るい1年がスタートする中、組織の方針や戦略、そして選択肢の手がかりとなるデータ主導の知見が尽きることはないと思えるのは、とても心強いことだ。ただし、そのような知見を検証するために、私たちが忍耐強く、オープンマインドでいることが必要となる。


"HBR's Most-Read Research Articles of 2021," HBR.org, December 29, 2021.