サステナビリティは、“ネクストデジタル”

戸沼 SDGsへの対応を新たなビジネスチャンスととらえて、積極的にチャレンジしているところが、アサヒGHDの特徴だといえます。たとえば、廃棄コーヒー豆などのアップサイクルをテーマに、東京都台東区、墨田区の事業者と連携してクラフトビールを製造し、数量限定で発売したり、ビール酵母の細胞壁を加工して農作物の肥料の原料にしたり、あるいは、コーヒー粕由来のエキスを凍霜害防止剤として農作物被害の抑制に使う。こうした取り組みはいずれも、責任ある企業の一つの姿です。

 調達部門においては、品質(Quality)、価格(Cost)、納期(Delivery)に加えて、サプライチェーン上における人権リスクなど、持続可能な調達をどう実現していくかという課題にも積極的にチャレンジしていますね。

近藤 当社のサステナビリティ経営はまだまだ発展途上の段階です。たとえば、サステナビリティのKPI(重要業績評価指標)とビジネスのKPIを連動させながら、各事業や各機能部門において、いかにして事業インパクトと社会インパクトを創出し、アウトカムを生みだしていくのか。また、それを可視化・定量化することも課題であり、試行錯誤しています。

 当社では、使用済みペットボトルを原料として新たにボトルを再生する「ボトルtoボトル」やバイオマスなど、環境に配慮した素材の比率を30年までに100%にするという目標に取り組んでいます。将来においても、お客様から選ばれる企業を目指して、環境や人権に配慮したエシカル商品を提供し続けることは不可欠だと考えています。

 CEOの勝木敦志は、「社会課題の解決を収益の源泉にする」とコミットメントしています。これの意味するところは、各事業や各機能部門が日常業務の中でサステナビリティの戦略を実行することによって、社会の持続性と事業の持続性を追求するということです。

 個人的な見解ですが、そうなれば、私が責任者を務めるサステナビリティを推進する部門は発展的解消につながると思っています。

海老原城一
アクセンチュア
ビジネス コンサルティング本部
ストラテジーグループ 公共サービス・医療健康 プラクティス日本統括 兼 サステナビリティプラクティス日本統括

東京大学卒業後、1999年アクセンチュア入社。行政、公共事業体、民間企業の戦略立案から大規模トランスフォーメーションプロジェクトまで多くに携わる。近年では、技術の進展に伴うデジタル戦略策定業務やスマートシティの構想立案、サーキュラ―エコノミーの戦略策定などの業務に多数従事。監訳書に『サーキュラー・エコノミー・ハンドブック 競争優位を実現する』(日本経済新聞出版、2020年)がある。

海老原 アクセンチュアでは、サステナビリティは“ネクストデジタル”だと言っています。つまり、従来のKPIにサステナビリティの項目を付け加えるのではなく、デジタル・トランスフォーメーションと同じように、サステナビリティを基軸として会社のあり方そのものを変革していく。責任ある企業の実現には、それが必要です。

 ビジネスとしてのKPIがあり、それとは別にサステナビリティ目標も達成せよと言われたら、事業の現場は混乱します。ですから、サステナビリティ目標を既存の指標に付け足すのではなく、カルチャーを含めて会社を抜本的に変えなくてはなりません。

 まず、ビジネス環境の変化に応じて会社が目指す方向、全社戦略を再定義することから始め、次にそれをKPIに落とし込んでいく、という流れが肝要です。そうすることで、会社全体の戦略に呼応するサステナビリティ目標を設定することができ、社会課題解決の必要性が社員の間で共有されます。それができれば、各部門の事業活動もおのずとサステナビリティがあらかじめ組み込まれたものになるはずです。

戸沼 「責任ある飲酒」をテーマに、お酒を飲む人も飲まない人もお互いに尊重し合える社会を目指す「スマートドリンキング」の展開も、まさに御社の事業の重要な取り組みの一つですね。

近藤 「責任ある飲酒」の取り組みについては、大きく2つの切り口があります。一つは、飲酒運転、大量飲酒、未成年飲酒など、不適切な使用によるアルコールに関連する社会問題を低減していく活動。もう一つは、自社の知見と技術を結集して革新的な商品を開発し、新たな飲用機会を創出していく活動です。

 それを具現化するために「スマートドリンキング」を推進し、お酒をあまり飲まない人が増えている若い世代を中心に、アルコールを飲めない人や飲みたくない人も楽しめる商品や場を提供していきたい、そのための選択肢を広げたいと考えています。

 具体例としては、ノンアルコール、微アルコール飲料の展開が挙げられます。2021年3月に発売し、6月から全国販売を始めたアルコール度数0.5%の「アサヒビアリー」は、多くの新規ユーザーとの接点を獲得しました。

戸沼 サステナビリティとは本来、あまり堅苦しくとらえるものではなく、誰もが楽しく、わくわくして過ごすために何ができるか、それをみんなで実現していこうという、ある種の“ノリ”のよさがあったほうが、推進力が上がります。

 そういう意味で、「楽しい文化の創造」という御社のミッションは、サステナビリティ経営と親和性が高いと言えるかもしれません。みんなが楽しく、わくわくできる世界観を描いて、そこからバックキャストで演繹的に導けば、おのずといまやるべきことやKPIが決まってくると思います。