調査対象の医師に5段階評価で回答を求めたところ(1=非常にそう思わない、3=どちらでもない、5=非常にそう思う)、女性医師はスタッフの支援、診療時間、意思決定への関与、仕事上のストレスに関して、自分の置かれた状況に低いスコアをつける傾向が見られた。
女性医師が男性医師に比べて、スタッフの支援と診療時間の点で低スコアをつけるのには理由がある。女性医師は女性患者を担当することが多く、女性患者の予防ケアのニーズが高いため、診療に時間を要する傾向が強いのだ。たとえば、乳房や骨盤の診察には数分間の時間を要し、他のスタッフの支援を求めても時間がかかる。その結果、診療時間に対するストレスが増え、仕事のプレッシャーも高まる。
男性医師と女性医師の間のギャップが特に際立っているのは、仕事を終えて自宅に戻った時、どれくらいプレッシャーから解放されるかという点だった。女性医師は男性医師に比べて、この点と関連する4つの領域すべてで低いスコアをつけた。
具体的には、仕事の心配をすることなくプライベートの時間を楽しめるかという点で、女性医師の平均スコアが3.39ポイントだったのに対し、男性医師の平均スコアは3.61ポイントだった。勤務時間外は仕事を忘れられるかについては、女性医師が3.22ポイント、男性医師は3.43ポイントだ。
また、勤務時間外に仕事の連絡を受けずに済むかについては、女性医師が3.20ポイント、男性医師は3.41ポイント。仕事上の問題で眠れないことがほとんどないといえるかという点は、女性医師が3.31ポイントで男性医師が3.51ポイントだった。
このようなギャップは、30~65歳の女性医師全般に見られる。したがって、「子育ての負担が重い時期に限った一時的な現象」と説明することはできない。
最後に、勤務先のDEI、すなわちダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包摂)の取り組みに対する見方も、女性医師と男性医師の間に違いが見られた。
プレス・ゲーニーが2019~20年、2800人以上の医師を対象に実施した調査では、黒人とヒスパニック系の女性医師は、黒人とヒスパニック系の男性医師に比べて、自分が所属する組織が多様性を重要視し、多様性を確保する姿勢を示している、と感じる人の割合が低いことが明らかになっている。
組織が多様なバックグラウンドを持つスタッフを尊重しているかという点について、黒人女性医師のスコアは黒人男性医師よりも5段階評価で0.42ポイント低かった。また、組織が多様性を確保しようとする姿勢を感じるかについて、ヒスパニック系女性医師のスコアはヒスパニック系男性医師よりも0.48ポイント低かった。
組織が職場の多様性を確保する姿勢を示しているかという問いに対して、黒人女性医師とヒスパニック系女性医師のスコアは、同じ人種や民族の男性医師に比べて、それぞれ0.45ポイントと0.54ポイント低い。
また、属性に関係なくすべてのスタッフに昇進のチャンスが平等にあるかという問いに関しては、黒人女性医師とヒスパニック系女性医師のスコアは、黒人男性医師とヒスパニック系男性医師に比べて、それぞれ0.34ポイントと0.26ポイント低かった。