これらの調査結果から、医療機関には注力すべき3つの戦略領域があることがわかる。すなわち、「柔軟性」「尊重」「昇進と給与の公平性」だ。筆者らが推奨する方法を以下で論じるが、少なくとも一部をすでに採用していたり、採用を検討していたりする医療機関も多い。
柔軟性
オペレーション担当リーダーは、複雑性を目の敵にすることが多い。しかし、働き方に柔軟性を持たせることは、特に女性医師にとって極めて重要な意味を持つ。女性医師は、仕事と私生活の両立は不可能に近いと感じていることもあるからだ。
これまで多くの医療機関は渋々ながら、ケース・バイ・ケースで柔軟な働き方を認めてきた。しかし、働き方の柔軟性を拡大する動きはコロナ禍で大幅に加速した。医療機関が通常の救急搬送対応と緊急性のない手術を停止する一方、遠隔医療が急速に普及した。自宅で診察を行えることは、医師だけでなく患者にも大きな恩恵をもたらした。なかでも学校閉鎖によって自宅で子どもの世話をしなくてはならない医師にとって、そのメリットは極めて大きいものだった。
多くの働く女性がそうであったように、コロナ禍で女性医師も在宅勤務の利点を知った。女性医師の多くが、自分にはどのような働き方ができるかを検討している。一方で、すでに毎日出勤する必要がない職場に転職した人も少なくない。
医療機関が女性医師をつなぎ留めたければ、臨床業務のスケジュールに柔軟性を取り入れたり、ジョブシェアリングを可能にしたり、部分的にリモート勤務を導入したり、育児休業制度を設けたりする必要がある。
それ以外で評判のよい取り組みとしては、緊急時のチャイルドケアを利用しやすくしたり、オンライン経由でチャイルドケアを依頼するプログラムの会費を負担したり、授乳室を利用しやすくしたりといったものがある。