昇進と給与の公平性

 医療機関で女性が最高経営幹部の地位にあることは少ない。これは女性に限らず、白人男性以外の全般にいえることだ。取締役会やCEO、シニアマネジメントレベルを含む組織のあらゆる階層で多様性を高めるために、徹底した努力をしなくてはならない。

 幅広い産業の多国籍企業を対象にした調査研究の結果では、このような取り組みを実行することで、組織のパフォーマンスが向上するという。たとえば、収益性、株価、社会的責任といった側面だ。

 経営幹部の人事の多くが、正式な公募のプロセスを経ることなく決まっている。その状況を改めるべきだ。個人的な人脈に頼るのではなく、公募を行い、正式なプロセスで人材を探す必要がある。透明性のあるやり方で、女性をはじめとするマイノリティの中から優れた候補者を見出すために、精力的に取り組むことが組織に求められているのだ。

 また、コーチングとメンタリングとスポンサーシップに関する正式なプログラムに投資し、若手の女性医師を支援することも欠かせない。そのようなプログラムを通じて、女性医師が経営幹部になるための準備を整えるのだ。

 さらに、給与に関して男性医師と女性医師の間で不公平が生じないよう、給与システムを再検討することも忘れてはならない。女性医師が女性患者に割く時間が長いことを考慮に入れ、新しい給与モデルを確立すべきだ。たとえば、リスク調整後の給与体系を構築し、担当患者の年齢、性別、併存疾患、そして健康の社会的決定要因(SDH)なども反映させるのがよいだろう。

* * *

 医療界のリーダーには、本稿で取り上げた3つのテーマに取り組むこと、すなわち柔軟性、尊重、昇進と給与の公平性を重んじる組織文化を育むことが必要とされるが、とりわけ女性医師に関して、これらを肝に命じなければならない。このようなアプローチは、医学部を卒業して医療現場で働き始め、同時期に結婚し子どもを持とうとする若手の女性医師のために、特に必要とされる。

 問題の所在はわかっている。データも揃っている。多くの組織はすでに変革に乗り出しつつあるが、そのような取り組みを加速させるべき時だ。コロナ禍により、この喫緊の課題を解決する重要性がいっそう高まっている。医療機関はこれ以上、女性医師を失うわけにいかないのだ。


"Why So Many Women Physicians Are Quitting," HBR.org, January 19, 2022.