ただし、注意も必要だ。極端な二極化アプローチが有効な場合でも、「見え方」のリスクは大きい。ある時点でにおける努力の度合いは、いつでも観察できる。一方、努力の成果については、長い時間をかけて初めて明らかになる可能性がある

「低強度80%」の状態は、怠けているように見えることもある。そして、同僚との相対評価に基づくパフォーマンス管理システムの下で仕事をする場合、それは大きな問題になりうる。たとえば、セールスチームであれば、長期的な成果ではなく、実際に行った営業活動(例:電話をかけた回数)でパフォーマンスが判断されることがある。

 スポーツの話に戻すと、高校のバスケットボールチームにおいて、最も必要な時に最高のパフォーマンスを発揮できるように、意図的に体力を温存し、エネルギーを節約し、みずからの努力に戦略的な優先順位を設けている選手がいたらどうだろうか。おそらく、そのような選手はチームから外され、長期的な成績とは無関係に、常に「頑張る」選手と替えられてしまうに違いない。

 二極化アプローチのもう一つの落とし穴は、低強度の努力を長時間続けることが、あたかも簡単であるかのように誤解されていることだ。けっして、そのようなことはない。

 生まれつき足の速い長距離ランナーにとって、練習で意図的に速度を落とすことは非常に難しい。中程度の強度で走る他のランナーに両側から追い越されれば、なおさらだ。同様に、プロの投資家にとって、何もせずにじっと座っているのは苦しいことだ。これまで実績のないトレーダーが一晩で巨万の富を築いた話を聞かされた時は、特にそうである。

 人間の脳は競争心が強く、我慢するようにはできていない。二極化アプローチを実践するには、意識的な粘り強さと徹底した鍛錬、そして長期的なパフォーマンスに対する揺るぎないこだわりが必要なのである。

 筆者は、個人の生産性に関する学術研究者でもなければ、専門家でもない。しかし、2022年という新たな年にパフォーマンスや成果を向上させる方法を検討する際は、自分の仕事における低強度・高強度モデルについて考えてみてはいかがだろう。実務経験から言えば、この二極化アプローチは、多くのビジネスリーダーが探求する価値のあるアイデアだと思っている。


"When Lower Intensity Leads to Higher Results," HBR.org, January 17, 2022.