●ビジネススクールはビジネス変革の専門家である
気候変動は前例のない変化をもたらし、企業は新たな製品・サービスの投入だけでなく、新たなプラクティスの検討と導入を迫られている。
企業はどうすれば、自社のビジネスモデル、思考モデル、組織文化を十分かつ迅速に変革できるのか――。これは、我々の講義と研究の大部分、およびエグゼクティブ教育における中心的なテーマである。
加えて、我々自身が気候科学の専門家ではなくても、大学内に気候科学の専門家が存在する場合が多く、関連する最先端の知識や技術やイノベーションにアクセスすることができる。
ビジネス教授陣の専門知識と、科学者とエンジニアが持つ気候分野の専門知識、そして我々が日々接している企業の実践的な専門能力を組み合わせることが、ビジネススクールならば実現できる見込みがある。
●ビジネススクールはパフォーマンスとリターンを測定する専門家である
企業は、自社のインプットとアウトプット、製品市場や資金調達市場がどのように気候変動の影響を被るかを理解する必要がある。
社内と外部への報告において、いかなる指標群を設ければ、事業者や投資家、消費者やそれ以外の人々に確実で信頼できる情報がしっかりと伝わり、判断の基準にしてもらえるだろうか。金融市場は、炭素排出やその他の気候因子を資産価格にどう織り込むべきなのか。グリーンウォッシング、あるいは皮肉を抑えた言い方をするならばグリーンウィッシングと、有意義な企業行動とをどう区別すればよいだろうか。
COPで発表された国際サステナビリティ基準審議会の設立が意味するのは、我々が気候会計の重要性と信頼性に関する考え方を前進させる必要があるということだ。加えて、我々が生み出すデータの信頼性を証明することができる、次世代の監査人を教育する必要性も求められる。
気候因子を反映した資本提供とリスク管理のプロセスを、どのように再構築すればよいだろうか。
●ビジネススクールはオペレーション管理の専門家である
さまざま業界で多くの企業が排出するクライメートフットプリントは、自社の境界を超えてバリューチェーン全体に拡散する。遠く離れたサプライヤーや顧客、パートナーに直接影響力を行使することは、不可能ではないが難しい。
とはいえ、我々ビジネススクールは、バリューチェーン内でインセンティブ、契約、協業がどう機能するのかについて豊富な知識を有し、オペレーションを管理し最適化するための技術的側面も知り尽くしている。
企業がバリューチェーン全体を通じて、集合的、効果的、効率的に気候への影響を減らすにはどうすればよいのか。脱炭素化をしながら、天候の極端な変動にうまく適応する態勢を整えるために、プロセスフローとサプライチェーンをどのように再構築できるだろうか。資源の消費抑制と気候変動の緩和策を同時に実行する循環的アプローチの利点を、企業はどう認識すればよいだろうか。