●ビジネススクールはマーケティングの専門家である

 先進国と発展途上国、どちらの経済にも見られるこの数十年間の消費パターンは、気候非常事態を招いている直接的な原因だ。

 消費者と事業者を炭素集約的なライフスタイルから脱却させるために、企業(および政府)はどのようなマーケティング戦略を編み出せるだろうか。炭素排出がゼロまたは少ない移動手段を促すなどが、その一例だ。

 消費者行動とマーケティング戦略を深く理解しているビジネス分野の学者は、消費者がより地球に負担をかけない欲求と習慣を持てるように、彼らを動機付けるための方法を企業に示すことができる。

 ●ビジネススクールは組織のリーダーシップの専門家である

 すべてのビジネススクールにおいて、組織変革や組織設計、センスメイキングといった主要概念と並んで、リーダーシップは中核を成す存在である。

 気候変動がもたらす長期的かつ大規模な影響という課題を考える中で、リーダーシップモデルをどのように適応させる必要があるだろうか。組織の適応モデル――その多くは現在とはまったく違う状況で生まれたもので、もはや目的に適していない――について、我々は異なる考え方ができるだろうか。

 システムの変革とコラボレーションを実現するには、境界を超えて機能する「システムリーダー」が求められる。

 ●ビジネススクールはインセンティブとガバナンスの専門家である

 ロースクールの教授陣と同様、ビジネス分野の学者はガバナンスとコントロールに関する問題を積極的に研究する。我々はこの数十年間、株主価値の向上につながるガバナンス機能と強力なインセンティブをどう構築するか、という問題に焦点を当ててきた。

 ガバナンスの向上を通じて企業に脱炭素化の加速を促すために、これらの知見をどう適用できるだろうか。役員報酬や取締役会の構造を変えるなども、その一例だ。

 反トラスト法に抵触したり、特権的利益の追求を助長したりすることのない形で、特定の企業に留まらない効果的な協業のモデルと仕組みを設計するために、我々はどう支援できるだろうか。それらの協業の効果を、どう測定すべきか。より大規模なインセンティブとして、気候変動問題に関する企業活動の変化を促すために、税制をどう活用できるだろうか。

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 ビジネススクールには多くのことが期待できる。先駆的な学者たちは、環境と持続可能性の問題にずっと以前から注目してきた。この10年間で、経営学者は気候変動問題への関心を飛躍的に高めている。経営学の各専門領域で、一流誌における編集部の見解や特集に背中を押されているのだ。

 教室では、コア科目でも専門科目でもこれらの問題を取り上げる機会が増え、カリキュラムに意義深い変化が生じ、認定組織の後押しも生まれている。気候変動問題に取り組むビジネススクールのランキングや報奨にも進歩が見られる。

 とはいえ、よりいっそう努力する義務が我々にはある。気候問題に関して企業が先頭に立つ必要があるならば、ビジネススクールも同様に――時には不都合があろうとも――そうすべきである。

 これまで激しいライバル関係にあった欧州の主要ビジネススクール8校から、学部長と学者たちが結集し、ビジネススクールズ・フォー・クライメート・リーダーシップというイニシアチブを立ち上げた。パリ協定と国連気候変動枠組条約の目標に向けた取り組みを加速させることが狙いだ。責任と学識のあるビジネスリーダーたちで構成される発展的コミュニティの形成に向けて、この協働によるインパクトは、個々の貢献を足し合わせるよりも大きくなると確信している。

 システム変革を達成するには、分野横断的な協働が必要となる場合が多い。気候危機が緊迫する中、迅速かつ効果的に協働する新たな方法を試すことが、ビジネススクールには求められている。


"Business Schools Must Do More to Address the Climate Crisis," HBR.org, February 1, 2022.