この心理的苦痛が長期化する原因は、3つの深い心理的欲求が満たされていないことにある。第1に、確実性を求める欲求が行き場を失った。私たちの生活は「当てになる」パターンの上に成り立っている。たとえば、服をかける場所や朝食を食べる時間、会社への行き方などだ。

 研究によれば、ごく平凡な現象であっても、確実性があると脳の報酬系が活性化される。一方で、そこに曖昧さが残る場合は、たとえそれが軽度だとしても、脳は肉体的苦痛に反応するのと似た神経回路を介して、強い脅威反応を引き起こすことが明らかにされている。信頼できるパターンが存在しないこと、すなわち数日先のことまで考えられない状態は、文字通り苦痛を伴うことを意味する。

 第2の満たされなかった心理的欲求は、コントロールや自律性に対する欲求だ。新型コロナウイルス感染症に関する新しい情報が錯綜するたび、これが急激に落ち込んだ。

 マスクは有効なのか、郵便物は48時間放置してから開封すべきなのか。食料品を買いに出ても何も起きないか、それとも命を危険にさらす可能性があるのか。私たちは長期にわたり、それらの答えを知りえなかった。人間には物事をコントロールしたいという欲求がある。そのため、これからどうなるのか言葉で表現しにくいという無力感が、さらなるトリガーとなった。

 第3は、他者とのつながりを求める欲求だ。人とのつながりは、困難な状況で頼りになるものだが、ロックダウンによってそれが奪い去られた。慰めのハグをすることも、友人のぬくもりに触れることもなく、ただ誰かのそばにいることさえできなくなった。その代わりに待っていたのは、孤立の苦しみだった。その苦しみは、喫煙以上に健康を害する可能性を示した研究結果もある。

 2021年夏、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種が広がると、最悪の事態は脱したかもしれないという期待とともに、そのような苦痛が和らぎ始めた。これでオフィスに戻ったり、旅行に出かけたりできると思った。言うまでもないことだが、そこにデルタ変異体が登場し、いまはオミクロン変異体だ

 その結果、私たちはいまのステージ、すなわち最も痛みを伴うともいえる「リハビリの段階」に到達した。再建、修復、再生が必要な時期である。

 しかし、ここに至るまでの時点で、捻挫した足首を固定する装具にも、在宅勤務にもうんざりしていて、私たちの我慢は限界に達している。この数カ月で学んだように、途中で挫折や後退を感じると希望は簡単に打ち砕かれ、絶望に変わってしまうのだ。

 この最後の困難な段階を少しでも楽な状態にするために、あらゆる手を尽くす必要がある。職場でかつてのルーチンに戻ろうとしている時は、これが特に重要だ。以下に、回復期に考えてほしい3つのアイデアを紹介しよう。