●メンバーの感情に対処する前に、まず自分の感情のバランスを取る
チームリーダーがメンバーの心理状態に影響を受けるのは自然なことだ。ただし、メンバーの怒りに感情的な反応を示さないように、自分自身の心理状態を安定させておく必要がある。
自分がどのような心理状態にあるかによって、最初の反応が変わってくる。たとえば、自分自身が職場のフラストレーションを管理するために努力してきた場合は、チームメンバーの不満を切り捨てるかもしれない。自分がやってきたのと同じように、メンバーが自力で乗り越えるべき問題だと考えるのだ。
あるいは、メンバーの不安は理解できるが、その不安をどのように解消すればよいか見当がつかない場合、問題が浮上すると話題を逸らそうとするかもしれない。関心は示しても話題を変え、問題に対処しようとはしないのだ。
すでにメンバーとの間に感情的な距離がある場合は、自分自身を守ろうとして、最初から自己弁護に走るかもしれない。研究によれば、自分が集団からのけ者にされているように感じると、このような反応を示しがちだという。人間には集団に帰属したいという欲求があるからだ。しかし、自己防衛の態度を取れば、相互の怒りの感情がますます高まる。
「切り捨てる」「話題をそらす」「自己弁護に走る」の3つは、いずれも衝動的な反応だ。これはリーダーの行動として、あまりに逆効果だと言わざるをえない。
リーダーはチームメンバーを鼓舞し、彼らのモチベーションを高め、コーチングを行う責任があるが、これらの反応はリーダーとメンバーの間に不必要な心理的距離を生み出す。このような反応を示さないために、まずは自分自身の感情を安定化させることに注力しなくてはならない。
チームメンバーが怒りの感情を抱いているというフィードバックを、直接あるいは間接的に受けた時、あなた個人に向けられた非難だと考えてはならない。その情報をあくまでデータとして受け止め、自分にとっての脅威と見なさないことが重要だ。
あなたが自分の意見を伝える機会は、やがて訪れるだろう。しかし、差し当たっては、チームメンバーの怒りが自分の評判に及ぼす影響を気にしすぎないほうがよい。
チームメンバーがどのような感情を抱いているかにかかわらず、その情報はリーダーに極めて有益な知見をもたらすことを覚えておいてほしい。あなたが彼らの感情に共感できるか否かとは、また別の問題なのだ。
メンバーが怒りを抱いていると知った時、その事実を受けて判断を下したり、自己弁護したいと思ったりするかもしれない。しかし、その最初の衝動を克服することができれば、問題解決に向けて、はるかに有効な戦略を実行できるようになる。