コミュニケーション
テクノロジーへの依存が、基本的なコミュニケーションの問題を生み出していることは明らかだ。私たちの多くは、2020年3月に初めて全面的なリモートワークに移行した際、技術的困難を乗り越えなければならなかった。ハイブリッドワークに移行する過程では、同じように多くの障害があるだろう。
あるエグゼクティブによれば、彼の会社の従業員がオフィスに戻り始めた時、ビデオ会議システムがハイブリッドワークのニーズに完全には対応できていないことに気がついたという(そもそも、システムの操作方法自体を覚えているかという問題もあったのだが)。
ハイブリッドワークには、実務面の問題もある。たとえば、リモートで働く人がいる場合、条件を公平にするために、オフィスに出社する人も全員が個別のコンピュータからログインすべきか。あるいは、そのような対応によってある程度の問題は解決するかもしれないが、それ以上に新たな問題を生み出しはしないか。
リモートチームやハイブリッドチームのコミュニケーションの問題は、技術面だけではない。たとえば、画面越しに発言しやすい人とそうでない人がいること、さらには力関係、地位、言語の違いなど、すでに職場でコミュニケーションの障壁になっている要素によって、この問題は複雑になりうる。
コーディネーション
あらゆる共同作業にはコーディネーション(調整)が必要だが、ハイブリッドチームの場合、調整に関する問題が対面の場合と比べてはるかに多い。特に対面で仕事をする人とリモートで仕事をする人の間に、研究者が「フォールトライン」(断層線)と呼ぶものが生まれやすくなる。
リモート勤務をしている同僚との調整には余分な労力がかかるため、オフィスで一緒に働いている同僚の間で交わされる、ちょっとしたやり取りや小さな意思決定から取り残されやすい。やがて、情報が集まるグループとそうでないグループがいる状況に慣れてくると、より重要な会話や意思決定からも取り残されてしまう。
コネクション
コネクション(つながり)の問題は、技術的なコミュニケーションやロジスティクスの調整に留まらない。社会的つながりというさらに大きな問題が、リモートワークの場合、危うくなったり、完全に失われたりしかねない。
職場で昇進するには、プロフェッショナルネットワークやメンターとの関係が重要だが、そもそも、このような関係を構築して維持すること自体、女性やマイノリティにとっては特に困難である。また、個人的つながりは社会的つながりによって維持されており、社会的つながりは心理的ウェルビーイングにとって重要であることが、研究結果からわかっている。
ハイブリッドワークは、自分が組織の中心にいて、組織に強くコミットしていると感じている「支配階級」と、自分は組織の中心から離れた場所にいて、仕事だけでなく、意義を見出して従業員と組織をより密接に結びつける社会生活からも切り離されていると感じる「下層階級」を生み出すリスクを伴う。
そうなれば、従業員の幸福度やコミットメントが低下し、どこか別の場所で働く機会を探そうとする人が増える可能性がある。