クリエイティビティ
ハイブリッドワークは2つのタイプのクリエイティビティ(創造性)を危険にさらす。最もわかりやすいのは、集団的創造性だろう。
ズームを使ってブレインストーミングを行うこともできるが、アイデアを出すタイミングと形式が決められているため、数人でアイデアを出し合う時や問題解決に集中的に取り組む時に起きるような、流動的な会話や副次的なやり取り、予期せぬ出来事といった実りは多くないだろう。
一方で、個人の創造性も損なわれかねない。一人静かに過ごす時間は、斬新なアイデアや洞察力を生むのに役立つ。しかし、常に創造的で革新的であることが求められる従業員にとって、何日も何週間も一人で仕事をすることが本当に創造的かどうかは、まだ明らかになっていない。
それに対して、同僚との交流や自然発生的な会話、誰かのキュービクルに飾られたオブジェが偶然目に留まること、あるいは通勤途中の風景の変化でさえ、創造性にとって重要であることは十分に考えられる。
カルチャー
クリエイティビティと同様、カルチャー(文化)の問題についても、パンデミックが長引き、誰もがオフィスに戻る見通しが立たなくなるにつれ、シニアリーダーの間でますます関心が高まっている。
リモートワークが始まった当初、企業は従業員の生産性と熱意が維持されていると感じて安堵した。ただし、それはおそらく、彼らがパンデミックの前から緊密に連携し、効果的に共同作業を行う方法を十分理解していたことに加えて、会社の規範や価値観、期待を理解していたことに負うところが大きかった。
しかし、既存の従業員が去り、インターンから新卒採用、経験豊富なエグゼクティブまで、さまざまな人材が新たに加わったいま、彼らの社会性をいかに高め、自社の企業文化に溶け込ませるかが、喫緊の課題となっている。
企業文化は、テクノロジーやコンサルティング、金融機関のように人材獲得競争が特に激しい業界において、新規採用の候補者に組織の独自性をアピールするうえで極めて重要だ。従業員がオフィスに出社しない、あるいは出社するとしてもごく稀で、ともに過ごす時間がほとんどない場合、会社独自の「雰囲気」をどのように維持できるだろうか。そして、人材獲得競争でどのように他社との差別化を図ることができるだろうか。
新しく入社した人にとって、企業文化はもちろん重要だ。その一方で、ポジティブな文化と組織に対する強いコミットメントを維持することも、すでに会社に馴染んでいる多くの社員にとって重要である。この点を軽視してはならない。
この2年あまり、従業員はさまざまな要求やストレスを抱え、その状況下で彼らの苦悩を十分認識せず、従業員のニーズに対して必要な支援を行わない企業文化が重なり、何度も打ちのめされてきた。
たとえ日々の業務に支障がない場合であっても、会社との距離が広がり続け、つながりが失われていると感じているかもしれない。そうであれば、モチベーションや組織へのコミットメントが低下し、離職率が上昇するなどのリスクが高まっている可能性がある。