シグナルを賢く使う

 会議には、相手の関心事や意向を示すシグナルや手がかりが抱負にある。しかし多くの経営幹部は、準備不足と自己認識の欠如から、自分のシグナルを意図的に使える機会を利用しない。また、会議中に語られたこと(あるいは暗示されたこと)を把握することもできない。

 会議中に「自動操縦」している人を誰しも見たことがあるだろう。意識はどこかへ行ったまま、以前の会議で起きたことを繰り返したり、次の会議を計画したりする。そして、時間が経つにつれ同僚はいら立ち、最悪の場合、その人の貢献が足りないことに幻滅してしまう。

 筆者がともに仕事をした経営幹部のサラ(仮名)は、会議で何を伝えたいか、自分の発言と伝え方の両方の面から慎重に考えていた。言葉、声(ピッチ、音量、イントネーション)、表情、身体姿勢から、以下のようなシグナルを発するのだ。

・話題への関心
・問題解決への強い意志
・新しいアイデアを生み出す創造力
・さまざまな人の意見を聞き、認識し、対応する能力
・緊張を強いられる状況での自信
・困難な状況下での積極性

 彼女はまた、会議で決まった行動や要点をまとめた議事録は、議論の豊かさや個々人の間で働くダイナミクスについて、そのごく一部しか捉えていないと感じた。そこで会議で学んだことを活かして、チームの以下の点を評価した。

・業績目標を達成する能力
・戦略実行における連携
・新たなイニシアチブを取る能力
・相互作用
・全体的な雰囲気、健康、ウェルビーイング

 サラは会議の前に、参加者に回答を求める質問、あるいは少なくとも検証したい仮説を書き出すことが有効だと気づいた。それをすることで、より明確な意図を持ってミーティングを始めることができた。また、会議の直後と数日後に、適切な振り返りの時間を設けた。

その瞬間に自分をコントロールする

 個性の強い人がいたり、重圧がかかったりする会議は特に、感情の浮き沈みが激しくなる。チームメンバーからのコメント、提案、含みを持つ言動は、フラストレーションや自分の立場に対する不安、怒りなど、強い反応を引き起こす可能性がある。

 明晰に考え、効果的にコミュニケーションを取るためには、冷静さを十分に維持することだ。過剰な反応は人々の記憶に残り、あなたの前向きな貢献の多くを消し去ってしまうため、避けるようにしよう。

 その瞬間に自分をコントロールするために、以下のような戦略的選択を行うことができる。

・焦点を当てるべきことを明確にする:自分が本当に関心のあるテーマ、そしてグループが関心を持つべきテーマを明確にすれば、挑むべき戦いと避けるべき戦いの選別ができるようになる。

・きっかけを予測する:自分にとって感情的反応を引き起こす話題(「カスタマーサービスをなんとかしなければならない」)、出来事(「新製品の発売でいつも失敗する」)、人(「じゃまをされる」)のリストを書き出す。次に、より建設的な反応のリストをつくる(「それは過去のことで、いまは別の組織です」「よろしければ、私の話が終わってからお話を伺います」)。

・自分の反応にラベルを付ける:感情的反応を示しそうになったら、冷静な第三者になったつもりで、(頭の中で)ラベルを付ける。自分の限界を認識しながら、どこに焦点を当てているか、どう感じているかに注意を払う(いわゆる「メタ認知」)。窓の外を見る、水を飲む、呼吸を整える、身体の軸を整える(足を床につける、背筋を伸ばす)などして、その瞬間からある程度の距離を置く。

・意識を集中させる:自分の目的と焦点を再認識し、目の前の問題に対処する別の方法に注意を向け、議論を再構築するようにする。

 会議でより戦略的になることは、自己中心的になることでも、超競争的になることでもない。計画を綿密に立てすぎて、会議を硬直化させることでもない。本稿で示した5つの戦略を実践すれば、より意図的な行動を取ることができ、最高の自分で議論に臨むことができるようになる。


"Stop Wasting People's Time with Meetings," HBR.org, March 14, 2022.