自分が果たしたい役割を決める

 多くの経営幹部は、自分に期待されていると思うことや、自分が過去にやってきたことに基づき、会議での役割を決める。たとえば、CFOは財務部門を代表して、財務関連の議論をリードする。しかし、このようなやり方は、自分が影響力を発揮したり、貢献したりする範囲を限定してしまう。

 自分が果たしたい役割を意識的に設定することで、新しい情報を素早く見つけ出し、長年の思い込みを捨て、当初は実現不可能と思われたシナリオを検証することができる。次の役割を試してみよう。

・カタリスト:議論を開始し、類推やストーリー、前例などを活用して、新鮮な思考を刺激する。

・カストディアン:決定内容が組織内でどのように展開されるのか、うまく機能させるには何が必要なのかを問う。

・チャレンジャー:データ、経験、直感をもとに、議論の論理性、一貫性、妥当性に疑問を投げかける。

・コンビーナー:議論に加わるよう促して、出席者全員が参加するよう働きかけ、議論の論点と出席者をつなぐ(「橋渡し」をする)。

・意思決定者:トピックを明確に組み立て、問題や選択肢に関する議論を促し、会議の中で決定を下す(会議後に一部の人の間だけで決定するのはできる限り避ける)。

 自分がどのような役割を担っているかオープンにすることで、他の人がそれに倣うこともある。筆者が一緒に仕事をしたあるCEOは、特に難解な問題に直面した時、各自に役割を割り振るのを好んだ。参加者が台本を読んで会話を演じる「パフォーマンスシアター」のようにならない限り、それはよい方法だ。

 あなたが役割を自由に選べるなら、議論で必要とされ、自分が楽しめる役割を選ぼう。たとえば、買収に伴う統合の問題を検討する時は「カストディアン」になる。シンキング・ディメンションズ・グローバル・コンサルティングのパートナーで、取締役会のアドバイザーとしての経験も豊富なスコット・ニュートンは、「同時に複数の役割を演じると、参加者を混乱させ、彼らの権利を奪う危険性がある」と指摘する。

 ニュートンはさらに、「私が協働したあるCEOは、会議の運営とインプットの提供という役割を分ける必要があることに気づいた後、意思決定がより実行可能で明確になり、グループも結果にコミットしていると感じるようになった」と述べた。

 アジェンダの項目の合間や、議論の間の小休止を利用して、自分の役割の変化を知らせよう。「私はここで思考を変え、事実に集中します」「この会話を聞いている顧客の視点を取り入れます」などと述べて、参加者が理解できるようにする。

自分ならではの貢献を考える

 会議を効果的に行うためには、広範な視点、スキルセット、経験、スタイルが必要であり、テーマが複雑な場合は特にそうだ。リーダーは、よいチームプレイヤーであると同時に、最高の自分を示すことが求められる。

 経営幹部のモリー(仮名)は、会議でよく話すが、場当たり的なことも多かった。彼女の360度評価では、同僚たちは、モリーがグループに価値を提供しているという確信を持てていないことが示された。そこで筆者は、貢献の量ではなく、質に焦点を当てるために彼女を支援した。それには、多くの準備を行い、発言するタイミングと聞くタイミングを選ぶための規律が必要だった。

 自分ならではの方法で貢献したいと思うなら、会議のテーマに最も適した形で、自分自身の強みを活かすことから始めよう。以下は、あなたの強みになるかもしれない。

・信頼性、または過去の成功から得た貢献が認められていること
・対象分野の知識
・問題解決や、シナリオを使用するなどリフレーミングの能力
・同様の問題に直面している他の組織、業界、またはエコシステムから得た洞察

 顧客と同じように、会議参加者の「プロフィール」を作成しよう。彼らのバックグラウンド、関心事、視点、疑問、過去の貢献などをまとめる。それを通じて、以下を特定することができる。

ホワイトスペース自分の専門知識や経験から、他者よりも貢献できる可能性があるトピック。
・補完者:あなたと共通の関心事、経験、または背景を持つ同僚。
・対立者:あなたと対立する意見を持つ同僚。

 これを利用して、他者の視点、貢献、反応を予測しよう。適切な場合に限り、前もって参加者に関与する。ただし、やりすぎは禁物だ。自分ならではの貢献とは、自分が勝者で、同僚が敗者になることではない。自分の強みを活かして、他者と差別化することだ。柔軟性に欠け、独断的で、事実だと証明できない可能性のある限定的な思い込みを抱えていてはいけない。

 すでにチームに属している場合は、過去の会議での経験を振り返り、自分ならではの貢献をするために、自分自身が身につけるべき能力について考える。たとえば、デリケートな話題を扱うことが多いなら、意思決定の選択肢を探る前に、他者の意見を十分理解するために注意深く耳を傾ける必要がある。また、危機に直面している場合は、問題解決能力を駆使して問題を掘り下げなければならない。

 このような能力を高めるために、他者を観察したり、オンラインコースやツールで自分の個別学習クラウドをつくったり、外部のコーチを利用したりするなど、最適な方法を考えよう。