従業員と協働して働き方の柔軟性を担保する
従業員が仕事以外の情熱を追求し、意義ある人生を送る妨げになる要素は何か。明確なのは、情熱の追求には時間が必要だということだ。
ところが、職場で過ごす日々はますます多忙になり、従業員のやることリストは増えるばかりで、時間を見つけることが難しくなってきている。従業員が仕事以外の情熱を追求する後押しをするためには、情熱の追求に費やせる時間を確保できるように、リーダーが支援する必要がある。
従業員が情熱追求の時間を確保するために有効な方法の一つは、勤務時間をみずから決める権限を拡大してあげることだ。そして、情熱の追求を中心に据えて仕事のスケジュールを決めることは当然だ、という考え方を明確に示す必要がある。
情熱を追求しようと思えば、決まった時間に活動したり、頻繁に時間を割いたりしなければならないこともある。従業員は、そのために仕事を休んだり、早退したりしても罪悪感を覚える必要はなく、職場での評価が下がるかもしれないと心配する必要もないと知っておく必要がある。
たとえば、ある人物は常々、娘のサッカーチームのコーチを務めたいと思っていた。チームの練習は火曜日と木曜日の午後5時に始まる。ところが、仕事は少なくとも午後6時までは終わらない。もっと遅くなる日もある。
この人物は、ボストン コンサルティング グループの「計画的な休暇」という考え方に勇気づけられて上司に相談した。すると上司は、火曜日と木曜日に朝早く出勤するのと引き換えに、早く仕事を切り上げられるようにしてくれた。それだけではない。ほかのメンバーに対しても、仕事以外の情熱を追求するために「計画的な休暇」を取得するよう促したのだ。
マネジャーは、従業員が平日でも情熱の追求に時間を割くようはっきりと後押しするだけでなく、サバティカルなどの制度によって仕事以外の自己を探求する時間を与えるのもよい。
たとえば、アドビは5年以上在籍している社員を対象に4週間の有給休暇を与え、「夢にまで見た旅行」を実現させたり、「長年執筆したかった小説」を書いたりできるようにしている。グーグルはフェローシップ制度を設けて、社員が最長6カ月間、非営利組織で特別なプロジェクトに携われるようにした。投資銀行など伝統的な性格が強いと思われてきた業種でも、同様の制度を導入する企業が登場している。
しかし、時間を与えるだけでは十分でない場合もある。情熱を追求するために、特定の場所を訪れたり、特定の場所で生活したりしなくてはならないケースでは、特にそうだ(サーフィンは海の近くに住まなければできないし、登山は山でなければできない)。
従業員が情熱を追求するのを支援するためには、働く「時間」だけでなく「場所」の柔軟性が必要なこともある。たとえば、シーメンスやツイッターなどの企業は、社員がどこでも好きな場所で働くことのできる制度を導入している。
あなたの会社が働く場所の柔軟性を認めることができるのであれば、情熱を追求しやすい職場であると売りにすることで、人材を呼び集めることができるかもしれない。