手本を示す
従業員が情熱を追求するために必要な柔軟性を提供するだけでは十分でない。リーダーは、彼らが柔軟な働き方を実践する際、居心地の悪さを感じずに済むようにする必要もある。
社会的圧力を受けることで、有給休暇を申請することさえも躊躇する人がいる。どのような人物が「理想的な労働者」かという古い固定観念や、よい従業員とは時間とエネルギーのすべてを仕事に注ぎ込む人物だという思い込みは、仕事の世界に強く根を張っている。従業員が仕事以外の情熱を追求できるようにするためには、マインドセットの転換が不可欠だ。リーダーが明確なお墨付きを与えることも効果がある。
従業員は一般的な勤務時間に仕事をしなければ反発を受けるのではないかと不安に思い、柔軟な働き方を実践しようとしないかもしれない。研究によれば、従業員がそのような不安を抱くのは無理もない。ワークライフバランスを実現するために勤務時間を柔軟に選択する人たちは、職場でしばしばスティグマ(負の烙印)を押されるのだ。
このような事情があるため、たとえ業務時間以外であったとしても、仕事以外の情熱の追求に時間を割くことで、仕事に熱心ではないと思われるのではないかと恐れる人がいる。ましてや一般的な勤務時間に、自社の制度を利用して仕事以外の情熱を追求することに、不安を感じずにはいられない。
しかし、仕事以外の情熱を追求する人が否定的な評価を受けることに、正当な理由はない。仕事以外のことに情熱を注いでいると仕事の成績が落ち込む、という考え方を裏付ける根拠はない。むしろ研究によれば、フルタイムの仕事に加えて「別の情熱を注ぐ対象」を持っていたり、副業をしていたりする人は、本業のパフォーマンスも上がる傾向があるという。
その理由は、仕事以外の情熱を追求することで力がみなぎってきたように感じ、肯定的感情が高まるからだ。同様に、エンゲージメントも高まる。さらに、仕事ばかりしていると、仕事に対する内発的動機が低下するので逆効果だ。休日や勤務時間外に仕事をする場合は、特に顕著である。
仕事以外の情熱に対する誤解を解消し、当たり前のことにするために、リーダーは重要な役割を果たすことができる。たとえば、自分が仕事以外で情熱を抱いているテーマについて、メンバーに語ってはどうだろうか。情熱を追求することで活力が高まり、職場でベストを尽くせていると語ろう。そして、誰もが同様のことをでき、それをすべきでもあると伝えよう。