従業員が自分自身の情熱について語り合うことを促す

 リーダーは、みずからの情熱について語るだけでなく、従業員の間に情熱の追求に好意的な規範を形づくることもできる。この点は重要だ。従業員は職場でどのような行動が適切かを判断する時、自分より地位の高いリーダーたちの行動よりも、自分と同等の地位にある人たちの行動に注意を払うケースが多いからだ。チームの中に情熱の追求に時間を割いている人がいなければ、リーダーがそのような行動を実践していても、それを真似ようとする人は現れにくいだろう。

 リーダーとしてできることの一つに、従業員が各自の情熱について語り合う機会を設けることが挙げられる。たとえば、本稿著者の一人(ヤヒモビッチ)は、研究室で週1回ミーティングを行い、メンバーが仕事以外で情熱を注いでいる事柄について語り合い、そこからの日々でメンバーが情熱を追求することを奨励している。

 仕事以外の情熱の対象について語り合うことを目的に、スラックやマイクロソフト・チームズのチャンネルをつくってもよいだろう。メンバーが自分の情熱について語り、ほかの人たちから賛同を得られるようにするのだ。

 従業員が情熱について語り合う機会をつくると、個々の社員が恩恵を受けられるだけではない。仕事に私的な要素が持ち込まれた結果、同僚同士の社会的結合が強まる可能性もある。一人ひとりが自分の私的な関心事を語ることで、同僚たちの間に親近感が生まれ、前向きな関係が育まれる土台が築かれるかもしれない。

 このような機会を設けることは、リモートワークする従業員が多い会社で、従業員同士の社会的結合を育む新しい方法になりうる。オフィスを持たない企業は、社員旅行などを通じて従業員同士の関係を築こうとする。たとえば、全社員がリモート勤務のソーシャルメディア企業バッファーは、ニューヨークに始まり、タイやオーストラリアに至るまで、さまざまな場所へ社員全員で旅行するために資金を使っている。

 社員旅行などの機会では、単に娯楽イベントを楽しむだけでなく、従業員がすでに抱いている情熱をさらに掘り下げたり、新しく情熱を注ぐ対象を追求したりするよう促せばよい。たとえば、従業員一人ひとりの関心に応じて、料理教室やツアー旅行に参加したり、語学を学んだりできるようにして、その費用を会社で負担してもよいだろう。

 従業員がオフィス以外の場所で働いている場合は、情熱を追求する機会をつくることで、共有経験を通じて従業員同士の間に肯定感が生まれ、働く場所も労働時間も異なる環境でもつながりを持ち続ける助けになる。