●仮説に固執しすぎない

 筆者がかつて、マッキンゼー・アンド・カンパニーのアナリストとして働いていた時、最初に学んだことの一つが「仮説ドリブン思考」だ。科学的手法に基づくプロセスを通じて、マッキンゼーのチームは迅速かつ効率的に問題を解決することができる。

 まず、問題に対して最初の答えを導き出し、次にデータを徹底的に掘り下げて、その答えを改善し、洗練させていく。このアプローチで肝心なのは、仮説に固執しすぎないことだ。最初の答えにこだわりすぎると、データから何が導き出されても手放せなくなる。しかし、最初の答えはあくまでたたき台として、固執しなければ、状況に応じて丸ごと捨てることもできるだろう。

 クリティカルシンキングを実践する場合、特に集団で実践する場合は、すぐ直観に頼り、何らかの答えや仮説を共有しようとしがちだ。そして、本来ならば自分たちの考えを反証すべきにもかかわらず、その正しさを証明するための質問をすることが少なくない。

 しかし、クリティカルな質問とは時として、当初の結論に関して根本から再検討を促すものだ。私たちは自己弁護に陥ることなく、開かれた態度で、みずから積極的に再検討しなくてはならない。

 ●話すことより聞くことに注力する

 これは簡単そうに聞こえるかもしれない。優れた質問をするために重要なのは、相手の話を積極的に聞くこと、つまりアクティブリスニングを実践することだ。

 アクティブリスニングとは、明示的であれ暗示的であれ、相手が言わんとしていることを、熱意と関心を示しながら理解していくプロセスだ。アクティブリスニングがうまくできると、相手の主張を十分に把握することができ、その主張のロジックを問いやすくなる。

 また、アクティブリスニングは脳の「予測エンジン」を無効化するので、よりよい質問ができるようになる。私たちの脳は、効率的で直観的な答えを生み出すようにできているが、それゆえに視野が狭まることがある。相手の話にじっくりと耳を傾けることで、その機能が無効化され、さまざまな答えに目が向くようになる。

 さらに、あなたが相手の発言を大事なものだと考え、その意見を真剣に受け止めていることも示せる。そうすれば、相手も話に実が入り、あなたの見解に対して心を開きやすくなるだろう。

 ●オープンエンドの質問をする

 質問を始める時には、イエスかノーの答えを求める問いは避けよう。むしろ、相手が心を開き、とうとうと語り出すような質問を投げかけるのがよい。

「この事業は安定していますか」と尋ねるのではなく、「この事業が不安定だとしたら、それはどのように不安定なのでしょうか。また、なぜそう思いますか」と聞く。「いまの仕事に満足していますか」ではなく、「いまの仕事のどこが好きですか。また、改善の余地があるとしたら、どのような点でしょうか」、あるいは「仕事が楽しいと思う時とモチベーションが上がらない時について教えてください」と尋ねる。そして、さらに質問を重ねながら対話を続けるのだ。

 相手の意見や説明を自由に話してもらうオープンエンドの質問は、集団におけるクリティカルシンキングを促進し、個人が自分の意見を詳しく説明する場を提供し、積極的に問題解決する余地を与えることができる。