●直観に反した意見を検討する
問題解決を試みる時、私たちはすぐ、集団思考の罠にはまりがちだ。集団の意見が早々にまとまり、正しい方向に向かっているかどうかを定期的に確認することなく、たとえ間違った道でも先へ先へと進んでしまうことがある。
そこで、直観に反する質問をすることが欠かせない。あなた自身が型にはまった集団思考に異議を唱え、原則から再考するのだ。
あなたの質問は的外れで、集団が正しい方向に進んでいることもあるかもしれない。また、迅速に物事を進めたい同僚から、嫌な顔をされることもあるだろう。しかし、どのような集団であっても、直観に反した意見を検討する義務がある。方向転換が必要な場合に備えて、恐れることなく、それを提起する人が必要なのだ。
●問題を「煮込む」
現在のように状況が刻々と変化する中では、決断を性急に下しがちだ。しかし、最も優れた質問は、熟慮し、十分な睡眠を取ることで生まれることが少なくない。
睡眠は実際、脳が問題を吸収して、問題をより明確に理解する助けとなる。また、慎重に検討したほうが、よりよい結論に達しやすい。研究からも、結論を急ぐと、それが最終的に正しかったとしても、後悔しやすいことがわかっている。
クリステンセンがクラスメートの質問から学びを得る方法で、筆者が素晴らしいと思う点は、その場で判断するのではなく、家に持ち帰り、注意深く何度も考えを巡らせたことだ。
筆者のかつての上司は、このプロセスを「問題を『煮込む』こと」だと表現した。おいしいシチューをつくるためには煮込みに時間を要するのと同様、思慮深い結論や質問を生み出すためにも時間が必要なのだ。
無用な焦りは禁物だ。数日間、あるいはそれ以上かけて、問題解決の工程を策定しよう。最初に問題を深く掘り下げ、次に自分が学んだことや質問すべきだったことをじっくりと考える。心静かに熟考して考え出した質問は、その場で思いついた質問よりもずっと説得力があるだろう。
●厳しいフォローアップクエスチョンをする
頭を働かせるのをやめて、安易な答えを受け入れたり、相手に詳細な質問をすることは避けるべきだという社会的圧力に屈したりするのは簡単だ。しかし、クリティカルシンキングを可能にする深い質問は、問題を掘り下げていくフォローアップクエスチョンの中から生まれることが多い。
親であれば身に覚えがあるだろうが、子どもは生来、好奇心の塊であり、何らかの答えを示しても、何十回も「どうして」と聞き返してくる。そして、親はしばしば答えに詰まったり、矢継ぎ早に答えているうちに、自分が最初に導いた答えを考え直したりするものだ。
クリティカルシンキングの核心をつかむために、子どものように「どうして」を連発する必要はない。むしろ思慮深く、時には厳しさを伴うフォローアップクエスチョンをすべきだ。相手の発言にしっかりと耳を傾け、フォローアップクエスチョンを考えるにはエネルギーを要する。しかし、それこそが、対話内容に関してクリティカルな理解を深めるための唯一の方法なのだ。
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クリティカルシンキングは、複雑な問題をこれまでになく斬新かつ興味深い方法で解決するために不可欠だ。この重要なスキルを身につければ、新しい職務を遂行していく時、組織の中で自分の地位を築いていく時、あるいは難問にぶつかった時に役立つだろう。単に質問に答えるだけでなく、質問を考え、それを投げかける能力を習得することが肝要だ。
"Critical Thinking Is About Asking Better Questions," HBR.org, April 22, 2022.