●徐々に始める
メンタルヘルスについて話すことは特別ではない、という状況をつくらなければならない。
「今日の気分はどう?」「週末はどうだった?」「あの仕事はどんな具合?」と尋ねるだけで、メンタルヘルスについて話し合う場を設けることができる。相手には、オープンで誠実、かつ共感的な口調で話しかける。気軽で対立的ではないアプローチを取ることで、よりオープンな対話を促すことができる。
同僚が身構えたり、自分の問題を隠そうとしたりするかもしれないと心得えよう。彼らはスティグマを恐れたり、職場のゴシップとして扱われることを恐れたりしているのかもしれない。したがって、同僚に対して、自分と話をすることを強く要求してはならない。そうではなく、「話したくなったら、いつでも聞くから」と伝え、優しく背中を押そう。
また、本人のパフォーマンスの正当性を評価することが欠かせない。たとえば、強い自信喪失を経験して、身動きが取れなくなっているかもしれない。あるいは、インポスター(詐欺師)症候群を経験したり、自分はチームにとって「弱いつながり」で「ついていけない」という罪悪感を抱いたりしているかもしれない。
そこで、これまでに困難な仕事をどのように成し遂げてきたか思い出させ、今後も大丈夫だと安心させて、自分が評価され必要とされていると実感させる。仕事量が精神的負担になっている場合は、負荷を軽減する方法がないか一緒に考えることもできるだろう。
●適切なアプローチを取る
さまざまな方法で働きかける。メンタルヘルスの問題を抱えている人は、恥ずかしさや困惑を覚えていることがあり、最初から直接会って話をするのは理想的といえないかもしれない。電話やテキストメッセージがより効果的な場合もある。
対面で話をする場合、オフィスから離れた場所のほうがプライバシーを守りやすいかどうかを考える。会話を始める時は、話した内容は非公開で、秘密を守ることを保証すると伝える。もちろん、その約束は守らなくてはならない。
最初の話し合いの後、特に相手がデリケートな話をしてくれた後で、本人の希望があれば対話を続けよう。精神疾患を抱える人の多くは、本当のことを知られると嫌われるのではないか、見捨てられるのではないか、拒絶されるのではないかと恐れている。したがって、穏やかに様子を伺いながら、会話を重ねていくことが欠かせない。
メンタルヘルスの問題よりもストレス要因について話したがる人もいるが、そのストレス要因が問題につながっている場合もある。そのような時は、たとえば「お子さんのことで、まだストレスがありますか?」ではなく「お子さんは学校に慣れましたか?」と尋ねることができる。





