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自分の能力を過小評価して、実力を偽っているように思い込む「インポスター(詐欺師)症候群」が、社会問題の一つとして注目を浴びている。有色人種の女性のようなマイノリティが、特に陥りやすい現象だ。ただし、周囲が安易なレッテルを貼り、女性に自己改善を求めるべきではない。問題の原因は本人ではなく組織の文化にあり、そのように思わせてしまう環境を受け入れてきた人たちにある。本稿では、インポスター症候群だと見なされる女性を一人も生まない職場文化を構築するために、リーダーに何ができるかを示す。


 2021年2月、筆者らはシンプルな提案をした──女性にインポスター(詐欺師)症候群のレッテルを貼るのをやめよう

 以来、「働く女性」を治すことではなく「女性が働く場所」を改善することを求めて、世界中のあらゆる人種の女性が声を上げている。さらに、インポスター症候群の概念に対して反動が起きていることは、最も過小評価されているアイデンティティを持つ従業員にとって、職場が自分の居場所を感じられて成長できる場所になるように、持続可能かつ体系的な解決策を後押ししている。

 2月の記事が話題になってから、筆者らは繰り返し質問を受けている。女性をインポスター症候群と見なすなと言うなら、どう捉えればいいのか。インポスター症候群が存在しない環境をつくるために、職場のリーダーに何ができるのだろうか。

 ここでは、マネジャーにできることを提案したい。

 ●従業員が自分を表現する言葉を変える

 仕事での経験を語る時に使う言葉を、慎重に考えなければならない。

 あなたのチームのメンバーが、インポスター症候群のような気持ちを抱いていると話したり、その名前をずばり口にしたりした際は、真摯に耳を傾けること。企業文化の中で「勝つ」ために何が必要を率直に話し合うことは、不正確な自己評価の修正につながる。

 あなた自身のインポスター症候群の経験を共有する際は、慢性的な過小評価や仕事の努力を正当に認めてもらえないこと、マイクロアグレッション(偶然や無意識からくる差別的言動)など、そうした反応の引き金になった要因を明確に説明する。同じように、チームのメンバーが自分の成功を過小評価したり、自分の居場所がないと感じたりするようになった職場での経験について、詳しく話を聞く。

 メンバーを個別にサポートすることは重要だが、個人のニーズに応じながら、インポスター症候群の本当の原因を解決するために必要な組織改革を行うことも両立させよう。

「深刻な過小評価がまさに続いている組織では、インポスター症候群をつくり出す価値観やイデオロギー、その結果として生じた慣行について考えることを中心に据えるより、専門能力の開発プログラムを導入して、研修に費用を投じ、あるいは外部のコーチやメンターに依頼するほうが簡単に始められる」と、アラバマ大学バーミンガム校の教養学部で学部長を務める、産業組織心理学者のケシア・トーマス博士は言う。

 インポスター症候群の誘因に対処する構造的な解決策を推進することによって、同じような経験を持つ人々を支援するために、持続可能で体系的な変化の実現につながる。