ステップ1:探索
第1のステップは、ESG関連の領域を広く探索し、ライバル企業が不得手とする領域を探すことだ。具体的には、ライバル企業が成果を報告していない領域に目をつければよい。ESG関連の報告は、そのほとんどが任意であるため、報告されていない領域は、その企業が競争力を持っていない領域と見られるからだ。
探索の有効な手掛かりの一つは、ライバル企業が発表しているサステナビリティ報告書だ。この種の報告書は、ほぼすべての企業が自社のウェブサイトに掲載していて、無料で入手できる。実際、格付け会社のほとんどが、こうした報告書を主な材料として、企業のレーティングを決めている。
また、有料の情報サービスもある。格付け会社や情報収集サイトのサービスを利用すれば、ライバル企業のESG活動に関する詳細な情報を入手できる。しかし、この種の情報サービスは、年間5万~10万ドル、あるいはさらに高額の長期契約を結ばなくてはならない場合がある。
これ以外に、よりコストのかからない情報源もある。政府機関に提出された報告書を調べたり、ネット検索を行ったり、非政府機関やニッチな情報サイト(たとえば、企業のクチコミ情報サイト「グラスドア」など)から情報を得たりするのだ。
このステップを具体的に示すために、決済処理会社レディー・ペイメンツの例を見てみたい。同社の場合、最大のライバルはブロック(旧スクエア)だ。
筆者らは、公開情報(無料のデータとブルームバーグなどの有料のデータの両方)を参照して、両社のESGパフォーマンスを調べてみた。戦略論専門の大学教授であれ、企業経営者であれ、ライバル企業であれ、誰でもグリーン・オーシャンを見出せることを示すのが狙いだ。
組織や政府が環境に及ぼしている影響に関して、グローバルに情報開示を行うシステムを運営する非営利団体CDPのウェブサイトを検索すると、ブロックの環境に関する情報開示の内容が長い間乏しい状態に留まっていることがわかった。そこから判断すると、同社は環境に関するパフォーマンスが常に低いものであったといえそうだ。
実際、ブロックの2020年と21年のサステナビリティ報告書を調べると、同社はエネルギーを大量に用いる暗号資産ビジネスを推進する一方で、最近まで温室効果ガスのネット排出量削減を約束していなかった。レディーのステークホルダーが環境に対する影響を気にしているのであれば、この点は、同社にとって大きなチャンスになりうる。