
ウーバー、リフト、ドアダッシュ、グラブハブ、インスタカートといったITプラットフォームの労働者は、アメリカ人だけでも4000万人に上る。筆者は、フードデリバリーサービス、ポストメイツのドライバーとして潜入調査を行った。その結果、筆者が感じたのは、労働者の独自性や経験、将来の希望や目標を抑圧するシステムだったという。これは、ギグワークにおける不具合ではなく、特徴であり、企業が人材を「買う」のではなく「借りる」傾向が加速していることに起因するという。本稿で筆者は、企業のテクノロジーへの依存が増す中、仕事のあり方が変化していることに対して警鐘を鳴らす。
懸念すべき変化を遂げている仕事のあり方
やっぱりか。最後にチェックした通路の、それも一番下の棚に、猫缶「フリスキー・シュレッド」はあった。そういう日なのだ。しゃがんで在庫を確認しながら、スマートフォンに映し出された顧客の注文に目を通す。「シーフードのフレークタイプ、チーズ入り・チーズなし。いろいろな味を混ぜて20缶」とある。だが、「いろいろな味」というのは、それ以上に具体的な「チーズ入りとチーズなしのシーフードのフレーク」という注文と矛盾しないのだろうか。それとも、シーフードというカテゴリーには、いくつも違う味があるのだろうか。自分は考えすぎているのだろうか。
この日の筆者の経験は、ビジネススクールの教授として重要なものだが、猫を飼っていない者としては非日常であった。人気フードデリバリーサービス、ポストメイツ(Postmates)の一ドライバーとしては、1年半の間に遂行した238件の配達の1件にすぎなかった。それは、ドライバーがどのような方法で仕事に価値を見出し、仕事のアイデンティティを形成しているのかを理解するために、筆者が実施した潜入調査の一環だった。
ポストメイツの一員として働いていた間、筆者は130時間運転し、同様のプラットフォーム(ウーバー、リフト、ドアダッシュ、グラブハブ、インスタカートなど)で乗車や配達の件数が延べ17万件に上るドライバーたちにインタビューを行い、対面およびバーチャルの社内会議に出席し、フェイスブックやレディットなどのSNSで開催されるドライバーフォーラムに参加した。
最近発表した筆者の調査結果は、ある意味、意外ではない。オンデマンドエコノミーを担い、アプリを通じて仕事を請け負う多くの「アプリワーカー」と同様に、「透視能力」のない筆者もまた、マンション建物内の配置や駐車場の規則、ドアのアクセスコードを「わかっていない」と顧客に怒られた。
そして、国内で最も収益性の高い市場を選び、筆者の知る最も効果的な戦略(冷めることも速いと言われる街中の「ホットスポット」を狙いたくなる衝動を抑え、マンションが迷路のように林立する地区を避け、単一の注文よりも複数の配達を伴う取引を優先するなど)を駆使したにもかかわらず、筆者もまた最低賃金以上を稼ぐのがやっとだった。
しかし、筆者の調査結果は、オンデマンドエコノミーにおけるアプリワークを超えて、仕事というもののあり方や、我々と仕事との関係における、もっと奥深い、懸念すべき変化についても示している。