リバース・イノベーションを生み出す3つの状況

 では、リバース・イノベーションと破壊的イノベーションには、どのような関係があるのか。リバース・イノベーションの可能性を生み出す状況は、主に3つあると見ている。破壊的イノベーションにもあてはまるのは、そのうち1つ目のみだ。

 1つ目は、富裕国と途上国の所得格差である。途上国では1人当たりの所得が非常に低いため、それなりの品質を超低価格で提供する、つまり富裕国の5%の価格で50%のソリューションを提供するイノベーションが生まれる条件が整っている。この50%のソリューションは、始めは富裕国では魅力的ではないが、やがて、富裕国で魅力的になるまで性能が向上する。これは明らかに破壊的イノベーションの例でもあり、Aは性能または品質、Bは価格である。

 もう1つは、富裕国と途上国のインフラ格差が生み出すものだ。途上国のインフラ(エネルギー、交通、通信など)は、そのほとんどが未整備である。そのため、新しいインフラ技術に対する需要は、既存のインフラを交換する必要性から需要が生まれる富裕国よりも、途上国のほうがはるかに高い。これは破壊的イノベーションとはいえない。

 3つ目は、富裕国と途上国の持続可能性の格差が生み出すものだ。多くの途上国は、経済発展の過程で、富裕国よりもはるかに早く環境的制約に直面する。たとえば、海水淡水化技術は、米国の南西部の砂漠地帯で必要とされる前に、北アフリカなどで導入される可能性が高い。これも破壊的イノベーションではない。

 リバース・イノベーションであれ破壊的イノベーションであれ、あるいはその両方であれ、既存の組織がイノベーションを実行するのは難しい。リバース・イノベーションの場合、企業は本社から権力や支配を移すことへの抵抗を克服しなければならないし、国内チームの組織モデルや期待を積極的に見直さなければならない。

 破壊的イノベーションの場合、企業は多数派の顧客が関心を示さない投資を優先することに対する最初の抵抗を乗り越えなければならない。また、投資するとしても、その新製品が最終的に既存ビジネスとカニバリゼーションを起こすという懸念を克服する必要がある。


"Is Reverse Innovation Like Disruptive Innovation?" HBR.org, September 30, 2009.

※本稿は2022年6月14日発売の書籍『HBR at 100』に掲出されているコラムを抜粋、翻訳したものです。