悪い知らせを届けなくてはならない時

 誰であれ、相手が失望するような知らせを、好き好んで伝えたいわけではない。だが、その不快な感情を和らげようと、自分のことを考えるあまり、本来気を配るべき部下に目を向けられていないリーダーがあまりにも多い。

 言いにくいことを言わなければいけない時は、以下の点に留意する。

 ●オブラートに包まない

 自分から伝える決定が、相手に痛みを与えるとわかっている時、そのショックを和らげたいと思うのは自然なことだ。しかし、たいていの場合、それはもっと大きな痛みを引き起こすことになる。

 本当はそうではないのに物事がうまくいくと安心させたり、明るい側面を強調したりすれば、相手が感じている悲しみや恐怖は「間違った感情」だと示唆することになる。

 自分の感情を表してもよいのだと部下に伝えれば、彼らが感じている悲しみや恐怖は正当な反応であり、尊重されるべき感情であると示すことができる。たとえ、部下が示した感情に共感できなかったとしても、相手の話に耳を傾け、その気持ちを理解するように努めることだ。そこで、部下の感情を貶めたり、蔑ろにするようなことを言ってはいけない。

 ●自己弁護に走らない

 難しい決断を迫られるのは、リーダーの仕事の一部だ。予算削減やレイオフをはじめ、厳しい知らせを受けた部下が落胆や怒りを示した時には、リーダーは潔く受け止めなければいけない。

 だからといって、敵対的な態度や攻撃的な振る舞いに耐えなければならない、というわけではない。ただ、リーダーはその矢面に立たなければならないのだ。

 リーダーが自分の決断を弁護すると、部下は自分の気持ちが切り捨てられたかのように感じる。「どれだけつらい決断だったか、あなたには想像もつかないだろう」などと言って、リーダー自身が被害者面をすることは、絶対にあってはならない。そのようなことをすれば、部下はあなたへの信頼を失い、よりいっそうやる気を失うことになるだろう。

 ●レイオフの対象にならなかった部下の罪悪感に対処する

 誰かがレイオフされた時、対象にならなかった従業員は「サバイバーズギルト」と呼ばれる罪悪感を覚えがちだ。「自分だけが生き残ってしまい、犠牲者には申し訳ない」という自責の念である。あるいは、辞めていく同僚をうらやむような、もっと仄暗い感情を抱く従業員もいるかもしれない。

 ここでも、部下がさまざまな感情を、安全かつ率直に表現できるようにすることが欠かせない。彼らの多くは「自分が次になる」ことを回避するために、自分の感情を隠して、ポジティブな素振りを見せるだろう。自分の感情を正直に示しても安全だということを、一貫性と透明性を持って相手に伝えることだ。

 ●可能であれば、難しい決断にチームを関与させる

 もし、あなたが経費削減や厳しい経営環境に直面しているならば、チームを議論に招き入れ、難しい決断を下すプロセスそのものに関与させるのもよいだろう。

 筆者はそのようなケースを何度も見てきたが、チームメンバーはリーダーよりもずっと厳しく自分自身を責めるものだ。しかし、彼らはほとんどの場合、コスト目標を達成しつつ、雇用を維持する創造的方法を見出したり、リーダーには見えていなかった機会を浮き彫りにしたりする。