リーダーみずから模範を示す
困難な時に自分自身を管理することは、おそらくリーダーにできる最も重要なことだろう。人は神経がすり減ると、相手の「言ったのにやっていない」ことに我慢できなくなる。そのため、リーダーが偽善を匂わせると、部下はモチベーションが低下したり、激怒したりするおそれがある。
リーダー自身が苦難に耐えている様子を部下が見た時、そこから何を読み取るかに、特に注意を払おう。その方法は以下の通りである。
●感情を生産的に管理する
リーダーであっても、厳しい環境をしのぐことで受けるダメージを隠すことはできない。部下に対しては、リーダーも一人の人間であることを示し、リーダーとしての能力に懸念を抱かれたり、批判の的になったりすることがないように、自分の弱さを上手に見せよう。
リーダー自身も不安や悲しみを覚えていることを認め、それらの感情に対する生産的な対処方法を共有するのもよいだろう。辛い気持ちを認めても自分の立場が危うくなることはないという模範を示すことで、部下の側も安心して同じことができるようになり、チームにコミュニティ意識と自分たちはサポートされているという感覚を生み出すことができる。
●率先してセルフケアを行う
運動や休養、健康的な食事、そして心の健康が重要であることは、誰もが知っている。だが、それが最も問われる、激しいストレスがかかった時に限って、セルフケアを疎かにしがちだ。
リーダーがみずからセルフケアを行う姿を示すと、部下もそれに従う可能性が高まる。困難な状況に直面しているにもかかわらず、自分自身の健康やレジリエンスを優先すれば、まるで仕事にコミットしていないかのように誤解されるのではないかとを恐れている人は多い。さらに悪いことに、リーダーがセルフケアを放棄していると、チームにも同じことが期待されているというシグナルを送ることになる。
●レジリエンスを示す
不確実性に対処していると、答えられない質問を投げかけられることが少なくない。人は不確実性に直面すると、無理にでも確実な話を聞きたがるものだ。未知の領域に進む時も、リーダーの考えに変わりがないことを示すことが、部下がレジリエンスを見出す助けになる。
リーダーは部下よりも多くのことを知っていて、部下よりも物事を上手にコントロールできると、彼らが考えるのも無理はない。部下に対しては、リーダーである自分が未知の物事にどう対処しているか、自分にはどうにもならないこととどうにかできることをいかに見極めているか話そう。
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厳しい時期をチームで乗り越えることは、偉大なリーダーシップに欠かせない要素だ。チームを上手にリードする方法は、意外なものであることが多い。
部下を叱咤激励したり、チームビルディングのイベントを開いたり、洒落た夕食会を開いたりするのではなく(これらには別に行うべき時と場所がある)、一歩下がり、この困難な時に部下が味わう感情が、いかに深遠で混乱したものかに思いを寄せることだ。
あなたの部下は何よりも、自分が理解され、認めてもらいこと、そしてサポートを必要としている。それらを彼らに与えよう。そうすれば、彼らはさらに高いレベルのモチベーションを抱く軌道を見出し、そこに戻ることができるはずだ。
"Keeping Your Team Motivated When the Company Is Struggling," HBR.org, August 17, 2022.